利便性や快適さなどを補ってくれるような用品は各種売られていますし、安全のために保安部品として法令で装着を義務付けられているものなどもあります。自転車の保安部品は警音器(ベル)、前照灯(フロントライト)、尾灯(リヤライト)または反射器材です。
これらの保安部品は、乗り手の安全を確保するために法令で定められています。ちなみに最近着用を推奨するキャンペーンが盛んに行われているヘルメットですが、これは法令で義務づけにれている保安部品ではありません。サイクリストの安全性を向上させるものではないからです。
少し前にも書きましたが、ヘルメットを着用すること自体を否定しているわけではありません。あくまで努力義務ですので、着用したほうがいいと思う人が着用すればいいことだと思います。しかし、安全のためにヘルメットは不可欠と言わんばかりの啓発活動を警察が展開していることには違和感があります。
なぜなら、『ヘルメットを着用しても事故は減らない』からです。事故が起きた場合に、怪我の程度を低減する結果にはなるかも知れません。つまり、あくまで事故が起きた場合の被害の軽減策に過ぎないわけです。事故を防ぐ効果はありません。事故を回避し、死傷しないために必要なのは事故を起こさないようにすることです。
いくらヘルメットを着用していても事故は起きます。むしろヘルメットを着用したことで安全になった気がして油断してしまい、かえって事故に遭いやすくなる可能性すらあります。ヘルメットを着用している自転車利用者のほうが、ドライバーが初心者ではないと安心して、側方間隔を小さくしがちという調査研究もあります。
事故で死傷しないために必要なのは、事故を起こさないこと、起きないようにすることです。そこにヘルメットは役立つものではないわけです。勘違いしがちですが、この点を踏まえなければなりません。一方で、事故を防止するのに役立つ自転車用品もあります。
例えば、サイクリストのドライバーからの視認性を向上させるための製品です。視認性が上がることで、ドライバーの見落しや見間違えによる事故を防止する効果が期待できます。装着していたおかげで、実際に事故防止効果があったのかを検証するのは困難で、実感できるものではないですが、理屈としてはそうなります。
そのことを実際に調べた人たちがいます。名門、
ブリティッシュコロンビア大学・オカナガン校の研究者たちです。サイクリストに夜間の視認性を上げるための反射材のついたベストを着てもらい、着ていない人との違いを調べました。実際に事故を数えるわけにはいきませんが、側方を通過するクルマとの距離などを調べました。
当然ですが、反射材が取り付けられたベストを着ていたほうが、より間隔があけられる傾向があり、相対的に安全に寄与するという結果が得られました。実は、それだけでなく、ベストの種類についても実験し、仕様によって違いがあるかを調べました。結果は
学術誌“Sustainability”の最新号に掲載されています。
単なる反射材で目立つようにしたものと、何かしらのコミュニケーションの役割がのあるものとの違いを調べたかったのです。具体的には、反射材の取り付けられた一般的なベストと、矢印型の反射材のついたベストを比較しました。ただ光るのではなく、矢印によって避けてくれるようメッセージを送っているものとの違いです。
矢印型の反射材は、夜間の道路工事の際に路上に置かれたりします。工事や障害物などによる危険を知らせると共に、進行するコースを変えて避けるようにとのメッセージです。形として矢印を示すだけで、その意図は明確に伝わるはずです。ドライバーは当たり前のように避けるでしょう。
実験には、“
ArroWhere”という製品が使われました。結果は、矢印のついた反射材ベストのほうが、より安全性を向上させる効果が高いことがわかりました。反射材ベストが効果的なのは予想がつきますが、その形状についても、ドライバーに対するメッセージ性の有無によって効果の違いが有意に存在することがわかったわけです。
矢印のシンボル付きのベスト(左側通行の国と右側通行の国では方向が逆。)を着用したサイクリストの場合、側方を通過するクルマが、よりスピードを落とし、より距離をあけて通過しました。どちらも反射して目立つのは一緒なのに、その反射材の意匠によっても明確な違いが見られたということになります。
これは、なかなかユニークな研究です。反射材ベストの仕様の違いによって、視認性を高める効果が違うかも知れないなんて、よく思いついたものです。ドライバーに対するメッセージ性という視点も、なかなか思いつかないのではないでしょうか。でも、わかった以上、使わない手はありません。
通販サイトを見ると、日本でも“
ArroWhere”の商品が少数ですが、いくつか売られていました。同社の特許の矢印デザインとありますので、他社はマネできないのでしょう。種類は限られているようですが、反射材ベストも含め、日本でも販売を拡大してもらいたいものです。
安全性を向上させる製品について、あまり気を使う人は多くないと思います。使用したかどうかで効果がわかりにくく、恩恵も実感できません。しかし、おかげで事故に遭う確率は下がっているであろうと推測できるわけで、こうした安全性を高める用品こそ、積極的に使うようにしてもいいのではないでしょうか。
◇ 日々の雑感 ◇
またハマス幹部が国連のUNRWA職員に成りすましていたことが判明、これはUNRWA存続の危機になりそうです。
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Posted by cycleroad at 13:00│
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