October 19, 2024

再発進はクルマのほうがラク

イギリスは自転車の活用を進めています。


ロンドンでは、もはや自転車都市とよぶべき状況にまで自転車に乗る人が増えています。そのためにインフラ整備に力を入れており、イギリス政府も大規模な予算をつけるなど、都市レベルを超えて自転車の活用を進めていることは、これまで何度も取り上げてきました。

やはりロンドンの自転車面での進化が目立ちますが、他の都市でもクルマの都市部への流入を減らすことで渋滞を抑制したり、クルマから自転車へ誘導することで環境負荷や温暖化ガスの低減をはかる対策として、自転車活用を推進する自治体が増えています。

VivaCityVivaCity

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自転車インフラの整備を進めるのと平行して、いかに市民にクルマの利用を減らして自転車に乗ってもらうか、そして自転車を利用した時の安全、いかに交通事故を減らすかといった視点での研究も進められています。イングランドのミッドランド地方の町、ソリフル(Solihull) で行われている実験もその一つです。

ソリフルは人口は12万ほどで、大都市バーミンガムから十数キロの近郊にある町です。ここの市内の交差点に、ある信号機が設置され実験が行われています。その信号機は、なんと「クルマより自転車を優先する信号機」です。クルマの交通量を増やすため、なかなか青にならない信号は見ますが、その逆です。

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接近する自転車を感知して、自転車の通行を優先するため、なるべくすぐ青信号にすることで、自転車の停止を少なくし、待ち時間を減らすことを優先する信号機です。クルマより自転車利用者の利便性を優先するため、交差するクルマの方の信号を赤にするのです。

もちろん、100%青になるわけではないと思いますが、なるべく自転車がスピードを落とさずに交差点を通過できるよう、いかに最適化できるか実験しているのです。最大で30メートル離れた自転車まで検知します。これは、自転車利用者の利便性を増すだけではありません。

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自転車に乗る人の安全性を高めることにもなると目されています。自転車は、止まってまたこぎ出すのに余計に労力が必要になります。なるべくなら止まりたくない、惰性を利用したいと思うのは人情です。実際、渡れそうならば赤信号を無視する人も少なくないでしょう。

停止を全くゼロには出来なかったとしても、赤信号で停止せざるを得ない状態が少なくなれば、そのぶん事故の可能性が減ると考えることも出来るでしょう。いちいち停止するストレスなく交差点を通過できて、目的地までの所要時間も短縮されることになるはずです。

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自転車での移動の時間短縮や利便性を向上させることで、なるべく自転車を使おうと思ってもらうことに貢献するでしょう。渋滞や環境負荷、大気汚染の削減に寄与します。同時に交通安全という観点からも事故を減らすことを目指しているわけです。

信号機にはAIが搭載されており、誤検知を防ぐような工夫もされています。例えば、鳥か何かを自転車の通過と検知・認識してしまい、何も横断しないのに赤信号にしてクルマを止めるのは避けるべきです。交差点ごとに人間が見て判断するわけにはいかないので、AIで自動的に判別するわけです。

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誤検知だけでなく、AIを搭載することで、全く止まらないでの通過は無理だったとしても、なるべく停止させないとか、減速を少なくさせるよう調整するなど、高度な信号の切り替えが出来るか実験しています。いずれにせよ、自転車のほうを優先に考えている点で今までとは全く違う信号機と言えるでしょう。

クルマの交通量が多い時間帯など、クルマの渋滞を激化させるようなことも避けたいわけで、そのあたりもAIに求められます。ただ、交差点ですからクルマは止まることもあるわけで、多少赤信号になる間隔が変わったとしても、それほどドライバーの不満を高めないような信号制御が理想的です。

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この実験は、ウエスト・ミッドランドの交通局とソリフル市議会によって実施されており、自転車レーンがあって2車線の道路と交差する地点が選ばれています。自転車の交通量によっては、結果も変わってくると思われますが、5年ほどの期間を使って行われる予定になっています。

この信号を開発したのは、交通機器の技術開発を手掛ける“VivaCity”という会社です。もちろんこの信号機だけでなく、渋滞を減らすために交通管制を最適化したり、ネットワークの問題を検出したり、事故を減らすべく安全の問題を抽出したり、インフラ整備計画のためのデータを取得するなど交通課題の克服の支援をしています。

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最近では、こうした道路交通の問題は多様になっています。モビリティの種類も増えていますし、脱炭素化が求められる中、モーダルシフトの可能性を探るなど、効果的なだけでなく、持続可能性の観点から、もっと広い意味での交通計画の変革が求められています。

そんな中で、自転車の活用推進は大きな要素となっていくと、少なくともイギリスでは考えられているようです。単に自転車インフラを整備するだけでなく、AIなど最新技術を利用した交通改革を通じ、まさに自転車先進国をイギリスは目指しているようです。


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◇ 日々の雑感 ◇

先週あたりから陽気のいい日が増えてきました。行楽日和ですが自転車で遠出してみてもいいかも知れません。

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この記事へのコメント
cycleroadさん,こんにちは.今回はこちらのyou Tube動画をご紹介させて頂きたいと思います.

https://www.youtube.com/watch?v=LpF4zoZtySk

ロードバイク等スポーツ自転車で食堂等に入る際のエチケット,マナーの問題に触れていますが,このコメント欄でロードバイクは車道の邪魔者,反社会的存在で1台残らず消えて無くなれば良い,電動キックボードの方がまだましだと強硬に主張しているトラックドライバーがいます.

彼の言い分は尤もなのですが,世界の自転車ロードレースの先進国にあってそれらスポーツ自転車と陸運業界はどのように折り合いをつけているのか知りたいものです.彼の諸国でもスポーツ自転車の重大事故,特に加害事故や違反,ないし不法行為があまり頻発していれば,ツール・ド・フランスもジロ・デ・イタリアもとうの昔に消滅していたでしょう.

彼の諸国と歴史的,文化的な相違,或いは気候風土,特に降水量の違いや自然災害の多さの問題もあるにせよ,やはり日本(人)は本当に自転車の活用がヘタクソ過ぎる国(国民)だと思います.日本の新聞社や放送局等は自転車の取り締まりや罰則の強化を支持しても,都市内或いは地域間交通の中で自転車の機能をどう向上させるか,という前向きな提言は殆どといってよい程見られません.その点を私は常々不満に思っております.

Posted by マイロネフ at October 19, 2024 16:07
マイロネフさん、こんにちは。コメントありがとうございます。

日本と欧米の自転車に対する考え方、歴史、文化などが大いに違うというのはあるでしょうね。
ましてや歩道走行のような政策がとられ、半世紀も続けてきたことによって、自転車に対するイメージも欧米と違ってしまった部分も否めません。
残念ながら、それらの違いにより、日本の自転車政策が海外のように進まないのも事実です。

私も不満ではあります。少しずつ理解が進み、変わっていくことを期待したいですね。
Posted by cycleroad at October 22, 2024 11:23
 
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