シェアサイクル、自転車シェアリングです。欧米や中国など世界2300以上の都市で運用されており、日本では遅れていましたが近年、ようやく各地で導入され始めています。下記は最近スタートしたり、実験が開始された場所のニュースのリンクですが、これはごく一部です。
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日本では、ママチャリを日常のアシとする人は多く、台数的には有数の自転車大国なこともあってか、シェア自転車については、あまり普及していませんでした。でも、近年はその利便性が認識されるようになり、インバウンドの増加などもあって、都市交通の一つとして導入する自治体が増えています。
当初は、単なるレンタサイクルと考える人が多く、都市で自転車をシェアするというスタイルや、必要な場所で借りて目的地付近で返すというシェア自転車の仕組みや利点があまり理解されていなかったようです。しかし、今やその利便性が徐々に理解され、他の公共交通を補完する点も評価されたことが背景にあるのでしょう。
ただ、導入が進む一方で、実はその6割が赤字を計上しており、存続が危ぶまれる地区も多いと見られています。開始はニュースやプレスリリースが流れますが、撤退したり、実験段階で終了したりする場合、ほとんどニュースにはならないので気づかないうちに、ひっそりと消えることになります。
高知市の自転車シェア、利用中止に…委託事業者と連絡取れず・市への支払いも滞る
最近報道された高知市の事例は、委託業者が破綻し連絡がとれなくなるという点で珍しいためニュースになりましたが、これは例外的と言えるでしょう。最近のトレンドに乗り遅れまいと導入するものの、結局採算がとれずに終了、撤退となる事例は少なくありません。
米リフト、自社単独運営の自転車シェア事業から撤退
これは国内に限りません。最近でもアメリカ・リフト社が自転車シェア事業から撤退しています。一時は競合する業者の自転車が街にあふれていた中国でも、その後は経営破たんしたり、撤退する事業者が相次ぎ、事業者の淘汰が進んだのは記憶に新しいところです。
シェアサイクルの仕組みを知ると、便利で市民に使ってもらえそうに思えます。実際にパリのヴェリブなど、成功事例もたくさんあります。貸出ステーションをどこに設置するかなどの課題はあるものの、自転車を大量に購入して配置すれば、わりと容易に事業がスタート出来そうに感じるのでしょう。
しかし、イザ開始してみたところ、いろいろ問題が発生して、存続が困難になる例は枚挙に暇がありません。自治体が直接運営したり、補助を予算化して、一定の赤字を補填するようなところはいいですが、民間だと採算をとらなければなりません。継続が難しくなり、受託を返上したり撤退する例も少なくありません。
その原因は、いろいろあります。利用者のマナーが悪く、自転車が壊されたり捨てられたりする、勝手に占有して利用料を払わない、サービス範囲の外まで乗って行かれ放置される、道路端に乗り捨てられた自転車が山積みとなり、市民の苦情が殺到する、などさまざまな事態があるようです。
そこで経営主体は、採算性を向上させるため車体に広告を入れたり、都市交通の一環として議会を説得して公費を投入させたり、機材の移動やメンテナンスなどを委託したり、不法行為を防ぐため顧客管理を強化するなど、さまざまな対策を講じるところもあります。
ただ、こうした努力によって改善される例がある一方で、なかなか解決されず、撤退や事業の譲渡などに至る例も少なくないと言います。運用する自転車シェアの地区によって、原因や環境、事情はさまざまですが、シェアサイクルを軌道に乗せるのは、一筋縄ではいかないということのようです。
問題はそれぞれですが、どこの事業者も悩まされるのが、自転車の再配置でしょう。貸出・返却用のステーションに自転車が足りなくなったり、逆にあふれてしまうため、自転車の再配置が必要になります。しかしトラックなどに積んでの再配置が常に必要となるため、人件費が大きくなり、収益を圧迫することになります。
自転車が偏在すれば、借りたくても借りられなくなったり、返す場所が見つからないなど、利用者の利便性は大きく損なわれることになります。その状態が頻発すれば、利用者が離れていくのは時間の問題です。駅や繁華街など、場所によって、どうしてもニーズは違うので、偏在は避けられない宿命と言えるでしょう。
世界各地のシェア自転車の事業主体、その地区の環境や背景にもよるので、一律に語ることは出来ませんが、シェアサイクル事業というのは、見た目ほど簡単ではないのは確かのようです。数年や十年程度で撤退となる地域も多く、一旦事業が開始されたからと言って、そのまま継続されるとは限らないわけです。
さて、世界的にシェアサイクルが一般的になり、たくさんの事業者が運営に乗り出す中、そうした事業者を対象とした、いわゆるBtoBのビジネスに乗り出す企業も出てきました。市民を直接相手にしませんが、事業を展開する主体を相手とした商売です。市場が確実に拡大していることが背景にありそうです。
そんな一社が、フランス・ボルドーを拠点として展開する、
Qucit 社です。同社は、シェア自転車事業者に向け、運営管理や効率を最適化するソフトウェアツールを提供しています。近年は、自転車だけでなく、電動スクーターなどもありますので、それらマイクロモビリティも含めて対応しています。
現在は世界30都市の10万台以上のシェア自転車をカバーしています。同社のソリューションを利用することで、再配置時間を平均40%削減し、顧客数、利用数を2割から5割増加させる結果が出ていると言います。事業の採算性を大きく向上させている例は多いようです。( ↓ 動画参照)
自転車の再配置だけでなく、故障車の回収や修理、顧客管理、課金システム、電動アシストやe-bike の場合の充電、位置情報や予約システム、適正なステーションの配置や台数などさまざまな要素があります。それらをデータサイエンスを用いて、論理的でスマートなシステムに落とし込んでいかなければなりません。
需要や使われ方、ステーションごとの偏りを予測するアルゴリズムを使って、各種の業務を最適化するわけです。例えば、自転車の再配置にしても、何台をどこからどこへ、どんなルートを通って、いつ移動させるかを細かく決めていきます。これによって人件費だけでなく、燃料代まで節約出来ます。
Qucit 社は、直接利用者相手の商売をするBtoC企業ではありませんが、この事業を展開することで、事業者企業の効率を改善し、運営を簡素化・最適化し、間接的に都市の移動サービスの質を向上させます。それが都市の移動効率を上げ、環境負荷を減らすことにも貢献すると考えています。
今後は、こうしたノウハウ、ソリューションを持ち、事業者向けのビジネスを展開する企業も増えていくでしょう。もちろん大手の事業者なら自社でノウハウを持っているところもあると思います。いずれにせよ、今後は科学的に事業を展開していくのが不可欠になっていくのでしょう。
結果として、シェア自転車事業の採算性が高まり、定着して長く安定してサービスが提供されるようになれば、利用者にとっても恩恵が及びます。今は事業者ごとにバラバラなシステムや運営も、ある程度標準化され、洗練され、使いやすくなっていくことが期待できそうです。
◇ 日々の雑感 ◇
自公合わせても過半数割れでした。国民人気が高く総裁になって持論を通して自民党を変えれば少しは違ったと思いますが、党内配慮に変節した石破首相への失望も大きいでしょう。チャンスを活かせず愚かな行動でした。
Posted by cycleroad at 13:00│
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