サイクリングを楽しむため、通勤や通学に使うため、運動不足を解消するため、健康増進やダイエットのため、買い物や近所への移動手段などそれぞれだと思います。ほかにも、営業活動で使ったり、宅配やフードデリバリーなどの輸送に使うなど、仕事で使う人もあるでしょう。
日本の自治体が乗る人を増やすためにインフラの整備を進めたり、活用を推進する理由としては、交通事故を減らすため、インバウンド需要も含めた観光振興のためといった目的も聞かれます。ただ、あまり主要な目的となってこないのが、地球環境への負荷を減らすため、温暖化ガスの排出削減のためといった理由でしょう。
もちろん、自転車による移動がクルマを使う場合と比べて環境に優しいのは明らかですから、自転車を使う理由の一つとして挙げられることは多いと思います。しかし、ヨーロッパなどと比べると、環境負荷を減らすためというのは副次的であって、自転車の活用は環境のためというのが主な理由となることは少ないと言えるでしょう。
このブログでも盛んに取り上げてきましたが、ヨーロッパの国や自治体が自転車の活用を推進するのは、まず環境面が挙げられます。渋滞緩和や都市部へのクルマの乗り入れを減らすのも、温暖化ガスの排出削減と同義のように語られます。省エネや大気汚染の軽減なども、広くは環境問題とリンクしています。
そこには、国や自治体、政治家に対する世論の圧力、すなわち市民、個人個人の環境への意識が高いことがあるのは間違いいありません。アメリカの一部も含まれますが、いろいろな話題を取り上げる中で、市民の環境への意識の高さを感じることが多くなっています。
日本でも、近年は環境への意識が高まっており、個人でも気にする人はいます。しかし、それはレジ袋よりエコバッグを使おうとか、燃費がいいのでハイブリッド車にしようとか、最近は高くて家計にも響くので冷暖房を使うのは少し減らそうといった、どちらかと言えばという選択が多いのではないでしょうか。
ヨーロッパの人でも温度差はありますが、個人でも本気で温暖化ガスの排出削減をしようとしている人が少なくありません。政府や自治体の施策を批判したり、企業や工場に排出削減を求めたりといった他人任せではなく、自らの生活を変えようと考える人が日本と比べて相当に多いように感じます。
おりしもCOP29が、途上国の気候変動対策のため、先進国が2035年までに年間3千億ドル(約46兆2千億円)の支援を行うとの目標で合意して閉幕しました。ニュースを見ても欧州諸国、そして欧州市民の危機感は強いものがあり、地球規模で対策を進めなければならない問題だとのコンセンサスも共有されています。
そして、パリ協定で定められた地球の気温上昇を1.5°C未満に抑えるという目標を達成するためには、政府や企業だけではなく、家庭が重要な役割を果たすべきという認識も高いのです。実は世界の排出量の70%は、間接的に家庭が起因していると指摘されています。
直接的に排出する割合は限られるとしても、発電された電力を家庭でも使うわけですし、生産されたクルマに乗ります。農畜産物の排出量は結局家庭で消費するためです。製品のパッケージもそうですし、衣料品でも電化製品でも、最終的には家庭で消費されるために生産されているわけで、それが間接的に70%になるわけです。
ですから、家庭において個人、一人ひとりが排出量を削減する行動をとらなければならないと感じている人が、日本などと比べて非常に多くなっているのは間違いないでしょう。いろいろな場面でそれは感じられますが、例えば最近、一部で人気となっているアプリにもそれは見ることが出来ます。
“
Zerofy”と呼ばれるアプリです。家庭でのエネルギー管理を目的としたアプリで、気候変動に対応すべく行動する人々を支援するアプリです。家庭での脱炭素化に役立つツールを提供すべく開発されました。このアプリで、家庭での排出量の削減や低炭素エネルギーへの切り替え等を支援し、煩わしさを減らすとしています。
まず、自分の家の二酸化炭素排出量を把握することが出来ます。既に使われている各種のスマートホームデバイスやスマートメーターなどと接続・連携させて使用量を追跡します。それ以外にも、例えば乗っているクルマの車種を登録しておけば、それを使って移動した時のエネルギー使用量も即座に計算されます。
必要な初期条件を入力、または連携させておけば、後はいちいち入力する必要はありません。歩いているのか、電車に乗っているのか、クルマか自転車かを感知して自動で計算されます。クレジットカードをアプリに接続しておけば、何を買って消費したか、潜在的な排出量まで推定して表示するのです。
どの行動が重要かが判断できるように明確な表示が出ます。さらには、肉の消費量を減らすとか、公共交通と自転車を組み合わせるとか、新しい習慣を提案します。必要に応じて家庭でのエネルギー消費を減らすため、ヒートポンプやソーラーパネルなどを導入する試算ができるなど、全て排出量削減に向けて出来ています。
アプリからワンクリックするだけで、別の新たな電力会社の見積もりを取ることまで出来ます。なかなか面倒で、電力会社の変更まで踏み切れない人もいると思いますが、そのハードルを下げ、踏み出しやすくしてくれます。少しでも排出量を減らすため、いろいろな行動をサポートしてくれるのです。
そのほか、ソーラーパネルのシェアリングなど、ヨーロッパで続々と出てくる低炭素生活を送るためのサービスが提案の候補に取り入れられています。特に追加のサービスの利用や、別のハードウェア、ソフトウェアなしに、この“
Zerofy”だけでも使えます。料金もかかりません。
例えるなら、歩数計やそれを用いた健康アプリに似ているでしょうか。健康増進のためウォーキングをしている人に、現在の歩数を知らせ、目標達成の手伝いをしてくれます。ただ歩いているだけでは何歩歩いたかわかりませんが、現在の状況や目標達成のために歩くべき歩数が明確になります。
状況や成果が見えることで楽しくなってきて、やる気が出たりするでしょう。“Zerofy”でも、自転車に乗るモチベーションが高まるかも知れません。このアプリ、ダウンロードは出来ると思いますが、日本はサポートされる国や地域に入っていません。おそらく日本で使おうという人は少ないからではないでしょうか。
EVの充電器からソーラーインバーター、家電製品、エネルギーメーターなど、数十のブランドの500を超えるデバイスが利用可能です。スマートプラグ統合により、電源プラグを備えたほぼすべてのデバイスを接続でき、その全てでエネルギー測定、現在のステータス、手動または自動での切り替えまでサポートしています。
このようなアプリが一部でにせよ人気になるなんて、ヨーロッパの人々の意識の高さに驚かざるを得ません。個人での温暖化ガスの排出削減に真剣であると共に、自転車に乗る目的が環境を考えて、という人が多いことも頷けます。もちろんサイクリングを楽しみますが、自転車に乗る意義の感じ方に日欧では違いがあるようです。
◇ 日々の雑感 ◇
イスラエルとレバノンが停戦で合意したと発表、まだ予断を許しませんが中東が安定に向かうことを期待します。
Posted by cycleroad at 13:00│
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