例えば、義足を必要とする人です。障害の状態にもよりますが、そのままで自転車に乗るのは難しいでしょう。前回は自作の水陸両用自転車でチャリティの冒険旅行に挑戦することで、途上国で足に障害を負った子供たちに義肢などを提供する団体に寄付をしている人を取り上げました。
障害に応じて特注された自転車、アプティブバイクという手もありますが、高価で簡単には手に入りません。その点、義足があれば普通の自転車に乗れるケースは多いでしょう。ただ、自転車に乗りにくいのは義足が必要な人だけではありません。義手を必要とする人も、自転車に乗るのは簡単ではないと言います。

事故などで腕を欠損したり、先天的な理由で生まれつき腕が短かったり、手首から先、手にあたる部分がない人もいます。障害の状態は人それぞれで、片手で乗る人もいれば、障害のあるほうの手をハンドルに添えることで器用に乗りこなす人もいます。
健常者でも短い距離なら片手でも乗れますが、常に片手となるとたいへんです。バランスや車体のコントロールの難しい場合もあるでしょう。長い距離を片手だけで乗ろうとすると、体幹に大きな負荷がかかったり、不自然な姿勢をとらざるを得なかったりと、疲労や痛みを伴うなど不快で、簡単ではないと言います。

そこで義手を使うわけですが、一般的な義手は自転車に乗るのに向いていないのだそうです。見た目の自然さを優先していて実用的でなかったり、装着部に力がかかって苦痛だったり、重かったりすると言います。ものを掴んだり、抑えたりすることは出来たとしても、スポーツに使うのには向いていないわけです。
義足とは違い、義手の場合は手先を動かすニーズがあります。そのため小型のモーターなどが組み込まれるなど、どうしても重くなったり、高度な技術や機構が導入されるため高価になります。誰でも手軽に使えるものではありません。そこで、このような状況を変えたいと考えた人たちがいます。

“
Koalaa”という義肢装具メーカーを立ち上げた創設者の、Nate Macabuag さんをはじめとするグループです。見た目ではなく、機能性や実用性を優先しています。軽量で、何より装着した時の負荷の小ささや快適さ、使いやすさが考えられています。
指先を繊細に動かすようことを目指すものではないので、電動の部品などはなく、そのぶん軽量です。個々に特注するようなものでもないのでコストの低さも特徴です。少しでも多くの義手を必要とする人たちに届けたいと考えているのです。

装着部にファブリックを使い、柔らかい着け心地、子どもでも自分で簡単に装着できます。見た目でそれとわからないような義手とは違いますが、子供たちからはカッコいいと好評だったりするそうです。軽量なので、長時間装着していても負担が少ないのも利点です。

これまでの義手は、医療機関等を受診して注文するなど手間と時間がかかりました。しかし、“
Koalaa”の義手はネットで申し込め、すぐに手に入ります。装着も簡単、コスト的にも安く済むのが大きなメリットでしょう。多くの人に使ってもらうための工夫です。( ↓ 動画参照)
義手に、各種アタッチメントを取り付けることで、いろいろな用途に対応できます。例えば、ヨガをするための義手は、従来型のものでもよさそうに思いますが、実は体重を支えたりする必要があります。スポーツ用に設計された義手やアタッチメントだと、使い勝手や快適性が大きく違うと言います。

自転車専用のアタッチメントも開発されています。こちらは長距離のロードレース、パラリンピックの出場選手に使われるような高性能なものです。実際に、現役や元パラリンピック選手や、義手を使うプロの自転車選手が開発に参加し、大きくパフォーマンスを向上させました。( ↓ 動画参照)
トップクラスのパラアスリート、Sarah Fisher 選手が設計に携わり開発された、革新的な新型義手は、その名も、“
Sarah Pro”です。彼女自身、こんなに長い距離が走行できると思ってもみなかった出来でした。約850マイルの走破に成功し、来年はアイアンマンレースに挑戦する予定です。( ↓ 動画参照)
これまでに試した義手では、長距離では痛みがあり、暑くて不快感があったり、腫れたり痣が出来たりしました。しかし、この革新的な義手は、装着していることさえ忘れてしまうほどだそうです。世界トップクラスのアスリートが満足できるレベルなのです。これは発明と呼ぶのに相応しいと絶賛します。( ↓ 動画参照)
従来の義手と違い、ハンドルを引きつけることも可能だと言います。これは上り坂などで大きなメリットをもたらします。もちろん、ロードバイクのドロップハンドルに対応しています。同じく開発に参加した、Morgan Newberry 選手は、この義手のおかげで世界選手権で初のメダルを獲得しました。( ↓ 動画参照)
元パラリンピックチャンピオンで、世界記録保持者の、Clare Cunningham 選手も開発に協力した一人です。彼女は2歳から義手を装着していますが、これまでロードバイクに乗る時は腫れて水ぶくれが出来てしまい、特に長距離は困難だったと言います。今では、この“
Sarah Pro”が手放せなくなりました。

柔らかくて軽く、着心地が非常に快適なだけでなく、丈夫で、走行中にハンドルを握っているという安心感を与えてくれます。義手を添えて使うのではなく、ハンドルを引くことができるのも驚きの実用性です。両側を均等に握ることができるため、これまでのような背中の痛み等もなくなったそうです。

アフリカの途上国や、パレスチナのガザ地区での切断患者のサポートもしています。紛争地域や低中所得国において臨床インフラがなくても、手頃な価格で快適な義肢装具を提供し、差し迫ったニーズへ対応することも重点課題です。地元のイギリスでは、子供たちに無料で義手を届けるべく寄付を集めるプロジェクトも進めています。

各種スポーツ用のスリーブが用意され、それ以外にも仕事や学校生活、料理、食べたり飲んだり、楽器の演奏などさまざまな用途に使えるパーツが用意されています。愛用する人たちの声をサイトで読むと、かなり画期的な義手のようです。この義手は、自転車に乗りにくかった人を含め、多くの人の福音となるに違いありません。

自転車に乗るのに、義足は想像できましたが、義手も重要とは知りませんでした。快適にスポーツが出来る義手装具を提供している人たちがいることも初めて知りました。広く知られた存在ではありませんが、義手でもスポーツをする喜びを届けようとしている人たちが、素晴らしい仕事をしています。


◇ 日々の雑感 ◇
また暗号資産の交換業者が廃業しました。今回も何百億円単位での暗号資産の流出で行き詰ったようですが、それがあの国によるハッキングで核・ミサイル開発の資金になっていたとしたら、その点でも責任は重大でしょう。
Posted by cycleroad at 13:00│
Comments(0)