例えば新しい自転車のアクセサリーを考え出す人がいますが、身近な不満や不便がヒントだったり、自転車とは関係ない生活用品を参考にしたり、新しく開発されたアイテムを自転車用に流用したりといった具合です。言われてみれば簡単なことだと思うこともあります。
ただ、なかなか凡人には思いつかない場合が多いわけで、新しい商品を生み出せるかどうかは、身近なところにあるヒントに気がつけるかどうかが分かれ目となるのでしょう。ところで、自転車と関係ないものから自転車用品のヒントを得る人がいる一方で、逆に自転車用品をヒントに他の用途向け製品を生み出す人もいます。

アメリカはポートランド在住の、Kevin Nadolny さん夫婦もそうです。自転車用品に発想を得て考え出したのは、ランナー用のベルです。つまり、自転車のベルを持って走るというアイディアです。その名も、“
Runbell”、文字通り走りながら、前方の人に向かって合図を出すことが出来ます。
ランナーは普通ベルなど持っていませんから、もし合図を出すとするならば声をかけるくらいでしょうか。あるいは、後ろからの接近に気づかない人に向かって、足音がするように靴を引きずったり、わざとらしい咳払いをしたりするかも知れません。

声をかけるにしても、あまり遠いと意識されなかったりしますし、近づき過ぎてからでは遅い場合もあります。下手な方向に動かれたら、かえって衝突しかねません。人通りの多い場所だったら、歩行者を追い越すたびに声をかけるのも疲れますし、なにか合図の方法があったら便利と思う人もあるかも知れません。
ランニングをしている人にすれば、なるべくなら同じペースで走りたいでしょう。でも、あまり遠くから叫ぶのも変ですし、近づき過ぎてからでは間に合わない、あるいは驚かせてしまいます。その点、ベルなら遠くから聞こえますし、合図としては絶好のアイテムということのようです。


多少違いはありますが、ほとんど自転車のベルです。代用も出来そうです。指輪のように人指し指にはめ、親指ではじきます。回ってしまわないように、中指にかける部分があるのが違いでしょうか。持って走りやすく出来ているわけです。走りながら、歩行者との間隔を見つつ親指ではじくだけです。
ランナーにはハンドルがありませんから指に装着するわけですが、ハンドルのない乗り物、例えば一輪車とかスケートボード、“EUC”と呼ばれる電動一輪のモビリティなどでも使えます。ちなみに、ヨーロッパの一部の国では、“EUC”に乗る時にベルを使うよう求められているそうです。

昨今問題となるのは、歩きながらスマホを使っている人の問題です。後ろから接近するのではなく、前方から正対して向かってきている場合でも、前方を見ていないと、下手をすると衝突しかねません。突然気がついて思わぬ挙動をとる人もいるので、前もって知らせておいたほうが安心だと主張しています。
犬を散歩させている人も注意です。犬が突然思わぬ方向に動き出すことがあり、あらかじめ離れた位置から知らせることが出来れば、飼い主が対応してくれ、不必要なトラブルを避けることが出来るというわけです。たしかに、ランナーにとっては便利なアイテムということになるのかも知れません。


気になるのは、かえってトラブルにならないのかということです。日本でも歩道で歩行者に向かってベルを鳴らす自転車利用者がいます。自転車に乗っている人にしてみれば、あらかじめ安全のためベルで知らせておこうという意図なのでしょう。
しかし、歩いている人にしてみれば、「どけどけ。道を開けろ!」と言っているように感じる人もあるでしょう。これをきっかけにトラブルとなり、暴力沙汰に発展した事例がニュースになることもあります。むやみに鳴らしてはいけないと道交法にもあり、前方の歩行者にベルを鳴らすのは、日本では問題になるかも知れません。
これは日本独特の話で、自転車が歩道を通るからという事情もあるでしょう。海外では自転車は車道走行が当たり前ですから、歩行者が突然車道に飛び出してくるような時以外、ベルを鳴らすことはないでしょう。つまり、歩道を歩いていて自転車にベルを鳴らされることはないと思います。
歩道でなく、車道と歩道の区別のない道路などなら、鳴らされることもあると思いますが、日本のようにトラブルにならないのでしょうか。ランナーにベルを鳴らされた場合に、腹を立てる人はいないのでしょうか。そのあたりはわかりません。

ただ、クラウドファンディングサイトで販売・資金調達をしており、すでに目標金額を超えています。欲しいと思った人が少なくなかったということでしょう。シンプルな製品ですが、指の太さや手袋をしている時に対応するためのアタッチメントが付属しています。
私は知りませんでしたが、実は10年前にもクラウドファンディングで販売し、その時の何千人ものお客のフィードバックを受けて改良したのだそうです。素材にこだわり、音にもこだわったと言います。ちなみに製造しているのは日本のメーカーで、“made in Japan”と宣伝しています。
ご夫婦二人で運営しているそうですが、4年ほど前には、同じような発想とスタイルの、“Torch Ring”を販売しています。こちらは自転車で使うようなライトをやはり指に取り付けるというアイディアです。夜、暗い場所を走るのには便利、頭に取り付けるより邪魔にならないということなのでしょう。こちらも売れたようです。
それほど奇抜なアイディアではありませんが、今までなかったわけで、他の用品を自転車用に流用するのではなく、その逆というところがユニークと言えるのではないでしょうか。自転車では当たり前でも、他のスポーツや日常生活では使われず、流用したら便利なものは、他にもあるかも知れません。


◇ 日々の雑感 ◇
石破総理は企業団体献金禁止に抵抗していますが、それなら30年前に政官業の癒着構造を断ち切る解決策として企業団体献金の完全廃止のため創設された政党助成金を自民党だけ辞退するのと引き換えにすべきでは。
Posted by cycleroad at 13:00│
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