天保の大飢饉で前年には大塩平八郎の乱などが起き、老中筆頭の水野忠邦が天保の改革を始めた頃です。今から200年近く前ということになりますが、その年に生まれたとされるのが、燃料電池です。イギリスの科学者、ウィリアム・グローブによって発明されました。
燃料電池は、そのくらい長い歴史を持ちます。その後、ベーコン型燃料電池が1世紀以上商業利用された時代もありましたが、内燃機関や熱機関による発電機が登場したため、しばらくは忘れ去られたような時期もありました。また近年、新しく改良された燃料電池が特定の用途で使われるようになっています。

燃料電池の発電方式もいろいろあり、長所短所があるのでエネルギー利用の主流とは言えませんが、今も各分野で利用されています。例えば燃料電池自動車、FCVは特定の用途を中心に使われています。充填時間が短く、航続距離は長い一方、水素ステーションの整備などの短所もあるため、EVに代わるまではなっていません。
家庭用燃料電池コジェネレーションシステム、エネファームは家庭で電気とお湯を同時につくり出せるシステムとして一部で使われ始めています。そのほか、公的施設などの停電時用の非常電源としても実績がありますし、日本以外で拡大しているものもあります。


一時期、燃料電池によるパソコンが話題を集めたことがありましたし、燃料電池アシスト自転車を開発したとするメーカーも時々現れます。ただ、どうしてもコストや発電効率などの短所もあり、リチウムイオン電池に置き換わってメジャーな電源として使われるような状況にはなっていません。
そんな燃料電池ですが、また新たな利用例を開発している企業があります。ドイツはブレーメンに拠点を置く会社、“
RYTLE”です。新たな利用例とはカーゴバイクです。日本ではあまり普及していませんが、ヨーロッパなどでは、個人だけでなく企業による物流などにも広く使われ始めています。

宅配便に導入されるなど、物流のラストワンマイル、すなわち地区の集配センターから各家庭への配送に使われる事例が増えています。カーゴバイク自体には、全くの人力だけのモデルもありますが、荷物の運搬に使われるようなモデルは、近年は電動アシスト機構を備えるのが普通となっています。
環境意識の高いヨーロッパでは環境負荷を減らすため、トラックから、この電動アシストカーゴバイクへの置き換えが進んでいます。日本と違い、ディーゼルエンジンが広く普及した欧州では、PM2.5や窒素酸化物などによる大気汚染、そして人々への健康被害が深刻になったことも背景にあります。

近年はヨーロッパ各国で、都市部へのクルマの流入を規制する動きが急となっています。このブログでもいろいろ取り上げてきましたが、都市部での配送にカーゴバイクというスタイルは、予想を上回る広がりを見せています。トラックと比べて小回りが効きますし、渋滞を回避できるなどのメリットもあります。
運べる量が少なく思えますが、都市部での宅配のほとんどには十分ですし、配送拠点からの距離も短いので、何度も往復したほうが効率がいいといいうこともあります。トラックの場合、混んでいる街中では荷下ろしのための駐車スペースを探すのが大変ですが、カーゴバイクなら問題はなく、すぐ近くまで乗っていけます。


配送拠点は、必ずしも営業所でなくても構いません。駐車場にクルマ1台分のスペースを確保し、そこにカーゴバイク用のコンテナを収納した、いわば親コンテナを置き、そこから配達員が配達することも可能です。配達拠点をより細かく配置したり、必要に応じて随時増減することも出来るでしょう。( ↓ 動画参照)
日本では物流の2024年問題と言われていますが、ヨーロッパでも人手不足の地域は少なくありません。カーゴバイクならば運転免許を持っていない人でも雇えます。そのほか車両代などのイニシャルコストから、燃料費、保険料、車庫代など全てが安く済むなどメリットが多いので、置き換わるのも自然な流れと言えるでしょう。
さて、そんなカーゴバイクによる宅配ですが、扱われる商品の種類が増え、当然ながら冷蔵や冷凍などの配送ニーズも出てきます。個人宅だけでなく、街中の商店などに食料品などを届ける業務も多いので、鮮度を保つためにも冷蔵庫や冷凍庫の装備を持つカーゴバイクのニーズが出てくることになります。

これまでは、断熱材を使ったコンテナボックスで代用してきた例もあると思いますが、サプライチェーンの中で、ラストワンマイルの配送にも最適な温度管理を求める動きが強まっています。カーゴバイクの部分でもコールドチェーンをというわけです。この傾向はますます強まっていくと見られています。
使われているのは電動アシストのカーゴバイクなので、電源はありそうに思えます。しかし、アシスト用なので出力も容量も足りません。荷物用のコンテナボックスを冷やすためには追加の電源が必要になります。ただ、電源の容量を増やすと、それだけ多くのバッテリーを積む必要があります。

カーゴバイクの車体のスペース的な問題もありますし、重量の問題もあります。そこで、この追加電源に燃料電池を使おうというわけです。
RYTLE 社は、ドイツ航空宇宙センターからのスピンオフ企業である、
H2Range 社から、この用途のための700Wの燃料電池の供給を受け、新しいモデルを今月発売する予定にしています。
ラストワンマイルのカーゴバイクでも食品の温度管理が可能となれば、これまで保冷トラックでしか運べなかった商品も運べるようになる可能性があります。宅配業者にしてみれば、さらにカーゴバイクが使える場面が増えますし、バイク専業の業者なら、事業の拡大が見込めます。( ↓ 動画参照)
個人宅への宅配ならば、アイスクリームや冷たい飲料が思い浮かぶくらいかも知れません。しかし、実際の流通では、レストランやスーパーなどへの食材の温度管理のニーズも多いと言います。RYTLE 社の車両はコンテナ式なので、冷蔵コンテナでないコンテナを併用することも可能です。
RYTLE 社は宅配業者に車両を販売したり、リースをするわけですが、これで販売先が広がることを期待しています。燃料電池の活用の分野の一つとして普及していく可能性もありそうです。燃料電池の長い歴史の中に新しいページが加わるかも知れません。
◇ 日々の雑感 ◇
アメリカ・ロサンゼルスの山火事の被害が甚大です。つい先日MLB優勝にわいた街が酷いことになっています。
Posted by cycleroad at 13:00│
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