February 01, 2025

不幸を減らして費用も減らす

物価高が進行しています。


政府や日銀が2%のインフレ政策をとっているのですから、当たり前と言えば当たり前ですが、実質賃金が物価高に追いつかないため、庶民の暮らしは苦しくなるばかりです。政府は物価対策を講じていますが、マッチポンプみたいなものですし、税金をとって石油卸会社に補助を出すなど効率や効果に疑問なものも少なくありません。

主食のコメの価格も昨年の令和のコメ騒動から上がったままですし、食料品全般で何度も値上げラッシュが繰り返されていて、家計に響いているという人は少なくないでしょう。食料品などの日常の出費以外の費用も上がっていて、毎日のことではないので気づきにくいですが、家計を圧迫しています。

Photo by Asanagi,licensed under the Creative Commons Attribution ShareAlike 3.0 Unported.ビッグモーター

たくさんありますが、例えばその一つが保険料です。災害が増えれば火災保険などが上がるのは理解できますが、なかには不当に掛け金が上がっていると疑われるものもあります。それはクルマの保険、自動車保険です。全体の保険金支払いの状況についてはよくわかりませんが、交通事故の件数や死者数は減少を続けています。

クルマの保険で思い出すのが、一昨年問題となったビッグモーター社の問題です。同社の社員がわざとクルマを傷つけ、保険金を不正請求するなどしていました。保険金が多く請求されれば、やがて加入者の支払う保険料に反映されて上がっていくのは明らかです。ビッグモーター社の顧客に限らず全体が上がります。

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この問題は同社だけでなく、大手損害保険会社にも問題があることが明らかになっています。損保会社からビッグモーターに出向があったり、同社から損保会社に自賠責などの顧客の紹介があったり、損保会社から修理工場を紹介するなど、いわば持ちつ持たれつの関係があったことが明らかになっています。

クルマの保険は、最近はネット損保などもありますし選択肢は多いように思えます。しかし、そのいずれも三大損保グループに属しており、そのシェアは合わせて90%に上ります。保険会社を乗り換えようにも選択肢が乏しいわけで、不祥事があっても、それによる会社への打撃が起きにくい状態も背景にあるのでしょう。

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修理を捏造して保険金を不正請求するなんて、とんでもないのは明らかですが、自賠責だけでなく事実上任意保険にも加入せざるを得ないのをいいことに、保険金水増しで保険料が上がるに任せていたのは、加入者に対して著しく不誠実な姿勢だったと言わざるを得ません。

世間からの批難を受け、社会的責任の大きい三大損保会社は、その責任を認めて改善の意向を打ち出しています。業界全体で課題を解決し、構造的な根本原因を変えることを目指すとも発言しています。保険を再定義して、社会課題を解決する新しいサービスを展開すると打ち出す会社もあります。

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保険事業は、多少は物価高の影響はあるにせよ、主なコストは保険金の支払いです。保険金の支払いが減れば利益も上がり、その一部を加入者に還元して安くすれば競争力が増すという商売です。保険金の水増しではなく、いかに事故を減らして保険金支払いの発生を減らすかに注力すべきでしょう。

その点で、注目すべき報告があります。イギリスの保険会社によれば、ウェールズで一昨年9月、市街地での制限速度が20マイル、時速32キロほどに引き下げられた結果、車両損害保険金の請求が全体で20%減少したそうです。それだけ事故の発生が減り、起きたとしても被害の程度が小さくなったと考えられます。

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ヨーロッパでは、こうした速度制限を検討する国や地域が増えています、ウェールズは、すでに実現させた先行する地域ということになります。従来のクルマ中心の考え方の人の中には、クルマ移動の所要時間が増えると反対する人もいるわけで、政治的には実現が難しい面もあります。

しかし、市民からは概ね支持が得られる傾向にあります。ウェールズ交通局のデータは、統計的にも有意であり、結果として速度低下によって死傷者や事故件数が減っています。さらに、保険金の請求額が減ったことで、保険料の減額というドライバーへのメリットにつながることも裏付けられています。

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渋滞や混雑で時速32キロも出せないことも多いわけですし、流れていた場合でも市街地では信号などでいずれにせよ停止するわけで、スピードを抑えて走行したとしても、さほど到着時刻はかわらないはずです。その一方で、ドライバーも事故の加害者になるリスクが減り、保険料も下がることが期待できます。

つまり、歩行者も自転車利用者もクルマのドライバーも皆ハッピーということになります。保険会社は、社会的責任として、こういう社会を目指すべくイニシアティブを発揮すべきでしょう。制限速度を下げるのに標識は換えるとしても、大規模にインフラを変えるような費用は必要ありません。

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損保会社が市街地のクルマの速度の低下実現に尽力するのは、保険金の支払いを減らす目的として営利企業の行動としても整合的です。より安全で事故の少ない社会を目指すのは、企業の社会的責任の点でイメージアップにもつながります。ぜひ日本の損保会社も、このような方向性を打ち出すべきではないでしょうか。

交通事故は被害者だけでなく加害者も不幸にします。市街地を走行する時くらい時速32キロでも十分でしょう。今まで知らず知らず来てしまったクルマ優先の考え方を改め、人命第一にすべきです。物価高をどれだけ緩和するかはともかく家計にも優しいわけで、日本でも市街地の速度制限を進めるべき時ではないでしょうか。





◇ 日々の雑感 ◇

明日は関東で広く、東京都心でも雪が降る見込みです。首都圏は雪に弱いですから交通への影響も心配です。

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