それは歩道走行です。この歩道走行による問題については、これまで何度も取り上げてきました。歩道走行による弊害があまりにも多く、私は自転車に関しての諸悪の根源だと思っています。近年はこの悪弊に沿ってモペットやいろいろなマイクロモビリティが歩道を走行しており歩行者の安全を脅かしています。
自転車を歩道走行させるという政治や行政による間違った施策のせいで、今まで数十年にわたって歩道を走行してきたため、多くの人が車道走行は怖いと歩道を走りたくなるのは責められないでしょう。しかし、この歩道走行が、ルールの無視や、無秩序・無法状態をもたらしています。

多くの人は自転車で歩道走行するので、歩きの延長のような感覚です。左側通行なんて意識していません。歩道が混んでいれば逆走のまま車道に出ます。逆走は、交差点などでの出会い頭の事故の原因になりますし、クルマとの事故の確率を高めています。歩きの延長なので信号や一時停止も気にかけません。
自転車なのに、歩道で歩く速度と同じくらいで徐行しろと言われても守れないのは人情でしょう。スピードを出して歩行者を縫うように走ります。歩行者と接触したり衝突して事故やトラブルになるケースも増えています。ここでは挙げきれませんが、自転車の歩道走行が原因となっている問題は枚挙にいとまがありません。

無秩序な自転車走行や法令の無視だけではありません。せっかくの自転車のポテンシャルを発揮出来ない原因でもあります。歩道を走行していたのでは実際問題としてスピードが出せません。本来はもっと速い乗り物なのに、それを知らない人は多いはずです。最寄り駅までしか使わず、もっと遠くまで行けるとは考えもしません。
勤務先までの直接の自転車通勤も一般的ではありません。最近は多少認知度が上がりつつありますが、時間がかかるので無理と考えるでしょう。これが車道を走行すれば速いですし、十分に通勤できます。距離にもよりますが、乗降りに時間がかかって遅れがちな朝の通勤電車よりも速かったりします。

この歩道走行という特殊な環境が育てたのがママチャリです。歩道をゆっくり走行するために進化した自転車が市場を席捲しています。足つき性が良く低速でも安定していますが、重い車体や太いタイヤでスピードは出ません。日本で自転車と言えばママチャリをイメージする人が多く、圧倒的多数を占めています。
自転車を歩道走行させる道路行政が続いてきたわけですが、どんな自転車でも歩道走行出来るわけではありません。ベロモービル、カーゴバイク、側車付き自転車、タンデム自転車、トレイラーの牽引など、大きかったり幅がある自転車は歩道走行出来ないように、法律で規制されています。

歩道走行と、このような規制で、ママチャリが圧倒的な割合を占めます。例えば、ヨーロッパでは普通に見かけるカーゴバイクも、日本ではほとんど見ません。歩道走行できないので、日本ではそれだけで不便で敬遠され売れないわけです。荷物はママチャリの前カゴと荷台の小さな積載量に頼らざるを得ません。
日本では自然なことなので誰も不便とは思っていません。しかし、これはクルマで例えるなら、乗用車はたくさん走っているのに、トラックは規制され、ほとんど走っていないのと同じ状況です。トラックが使えないなんて考えられませんが、自転車についてはトラックが全く使えないような状態なのです。

カーゴバイクは日本ではあまり知られていないので、無くても問題とは感じられていませんが、あると便利な場面はたくさんあります。ヨーロッパなどでは、環境負荷を減らすためにクルマの都市部への乗り入れを制限するなど、自転車の活用が進んでおり、移動だけでなく運搬面でカーゴバイクが使われています。
カーゴバイクがあれば、荷物もたくさん運べます。家具まで運ぶ人もいます。最近は電動アシストが普及してきたので重い荷物でも問題ありません。送迎などで子どもを乗せるのにも使われます。子どもの座面が地上から低いぶん安定しており、普通の自転車にチャイルドシートを取り付けるより安全なのです。

日本では、停車して駐輪する間に転倒させてしまい、高い位置から子どもが落下して怪我をする事例が後を絶ちません。カーゴバイクなら、もし転倒しても座面が低いため、致命的な怪我になりにくいのです。もちろん3輪のトライクのカーゴバイクなら転倒もしません。
最近はカーゴバイクにもいろいろな種類のものが出てきています。例えば、オランダのカーゴバイクブランドである、“CYCLR″が開発した“
CYCLR-FLEX”は荷物の量や乗せる子どもの人数によって、カーゴ部分が拡張できるというユニークな設計です。


カーゴバイクというと、武骨で重い車体というイメージがありますが、“maniac&sane”の“
maniac”というモデルはカーボンファイバーのフレームで12.8キロしありません。高性能なコンポを採用し、ロードバイクのようなカーゴバイクという位置付けです。電動アシスト版もあります。
多くのカーゴバイクが、場所によっては駐輪時に邪魔になったりするのも確かですが、“
Gambade”は、移動だけの時と運搬したい時と使い分けのできるカーゴバイクです。前輪部分を着脱することで、それぞれの場面に対応します。着脱もワンタッチで出来る機構が採用されています。( ↓ 動画参照)

運送会社、宅配業者などが市街地の、いわゆる
ラストワンマイルの輸送に使うカーゴバイクも進化しています。連結式にすることで、ドライバーの積み下ろし時間を短縮したり、荷物によって仕様を変えたり出来ます。周囲を360度モニターできたり、広告を流す、QLED スクリーンを搭載するなど、新しい機能が満載です。
ヨーロッパなどでは、コロナ禍の影響もあって自転車レーンなどの整備が近年進んでいます。もちろん、その前から車道走行であり、カーゴバイクが使われてきましたが、さらに活躍する場面が増え、活用が広がっています。カーゴバイクの改良や新機軸を打ち出す動きも増えています。( ↓ 動画参照)

一方の日本での自転車環境はあまり改善していません。国土交通省や警察庁は、半世紀続いてきた歩道走行を、その前まで日本でも当たり前だった車道走行に全面的に戻し、世界的な非常識を改めることを宣言しました。しかし、その転換は遅々として進んでいません。
自転車の歩道走行によって、荷物の運搬という点でも自転車のポテンシャルが大きく損なわれています。日本では馴染みがないのでピンと来ない人も多いと思いますが、カーゴバイクをもっと活用できるようになれば、日々の生活や荷物の運搬などでもっと利便性が向上するでしょう。
日本でも、かつては車道走行でした。本来そういうものなのですから当然です。日本独特の歩道走行にした結果、それがいかに弊害をもたらしてきたか明らかでしょう。本来の形に戻すことが急務です。新たに変更するのではなく間違いだったのです。「過ちては則ち改むるに憚ること勿れ」、躊躇している場合ではないと思います。
◇ 日々の雑感 ◇
ようやく寒波が去り、ほっとした人も多いでしょう。今度は季節外れの暖かさらしいですが春に向かうのでしょうか。
Posted by cycleroad at 13:00│
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