March 18, 2025

それが愚かな行動だと気づく

プラハはチェコの首都です。





市街中心部にある、プラハのオルロイ(天文時計、Prague Orloj)は中世からあるもので、観光名所としても人気のスポットです。太陽や月などの位置を示す天文図の文字盤、毎正時に動く人形の仕掛けなどのゴシック彫刻が有名でユネスコ世界遺産にも登録されています。

西暦1410年から動き続けていますが、この歴史的な時計が、4月3日の午前10時に停まります。イエスの十二使徒の人形が停止し、死者の鐘が138回鳴ります。実はこれ、チェコの保険協会などが提唱して始まった“National No Rush Day”全国ノーラッシュデーのイベントなのです。

Photo by Andrew Shiva,under the GNU Free License.Photo by Steve Collis,licensed under the Creative Commons Attribution ShareAlike 3.0 Unported.

この日は『急がない日』として多忙な現代人に、生活の中でゆっくりすることの必要性を訴え、ドライバーにゆっくり走ることを呼びかけています。このコンセプトはチェコ国内のあらゆる組織に受け入れられているようで、多くのメディア、学校、スポーツ機関、企業などがこのアイデアに対する支持を表明しています。

道路では、スピードを出して運転することが当たり前のようになっています。このことに疑問と危機感を持ち、人生をゆっくりと振り返ってみることを促しているのです。急ぎ過ぎて心臓が永遠に止まってしまわないよう、私たちは皆、速度を落とす必要があると訴えています。( ↓ 動画参照)



2023年にチェコでは、スピード違反が原因の交通事故で138人が死亡しました。スピードを出していなければ、失わなくて済んだかも知れない命です。オルロイの鐘の鳴る数は、この死者の数です。永遠に心臓が止まってしまう前に、スピードを落とそうという啓発なのです。

チェコに限ったことではありませんが、忙しい現代人は、無意識にも急いでしまっています。道路が空いていれば、クルマは制限以上のスピードを出して流れています。スピード違反の状態が恒常化しているのも事実でしょう。よく考えてみると、そんなにスピードを出す意味があるでしょうか。

Photo by Godot13,licensed under the Creative Commons Attribution ShareAlike 3.0 Unported.Photo by James Grimmelmann,licensed under the Creative Commons Attribution ShareAlike 3.0 Unported.

道が空いているからと言って、都市部で速度制限を超えて走行して、たとえ目的地に多少早く着いたとしても、それほど意味のある差でしょうか。ギリギリまでスピードを出して、少しでも早く着こうとしますが、それに伴う事故のリスクの増大に見合うようなメリットが得られるでしょうか。

都市部では、多少スピードを出せたとしても、どうせすぐ信号につかまって停止させられますから、加速・減速を繰り返すだけで、思ったほどの時間節約にはならないでしょう。少しでも早くと急いでも、結果としてその違いは大きくないでしょう。たしかに、無意味な行動のような気がします。


道路でのクルマの移動速度が下がると安全性が高まることは、各国の調査で明らかになっています。速いスピードは交通事故死の大きな要因です。例えば、国によっても多少違いますが、死亡事故の4分の1は速度が関係していると言われています。死者数は平均の超過速度に比例ではなく、指数関数的に増えます。

時速35マイル(56km)で走行するクルマが人をはねて死亡させる可能性は、時速20マイル(32km)で走行するクルマよりも5倍高くなります。一方で、平均の移動速度を10%下げると致命的な衝突事故が 34%減少することがわかっています。( ↓ 動画参照)



多くの都市では渋滞が常態化し、それほどスピードが出せないことも多いでしょう。しかし、そのぶん空いていると無駄にスピードを出していまう人は少なくありません。そこで、例えばオランダのアムステルダムでは、500以上の道路で、最高速度を時速50キロから30キロに引き下げることにしています。

これで市内の道路の80%が時速30キロ以下になる予定です。そのほかのヨーロッパの都市でも、多かれ少なかれ都市部の最高速の制限を引き下げる傾向が強まっています。クルマのスピードが遅くなれば、クルマ同士の事故も含め、安全性が高まり、そのメリットは明らかだからです。



どうしても急ぎたい時もあると思いますが、そうでない時でも無意識に不必要なスピードを出してしまっていないでしょうか。たいして時間節約効果がないのに、神経を使ってスピードを出しても、それに伴う交通事故を起こすリスクに割が合わないのではないでしょうか。( ↓ 動画参照)

このブログでも過去に何度か取り上げたことがありますが、ゾーン30など、都市部を中心に時速30キロ以下に速度制限する都市、地域は増えています。いろいろな統計を見ても、クルマのスピードが時速30km/hを境に、衝突された歩行者が死亡する確率が急上昇することが、過去の多くの調査から明らかになっているからです。

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ただ、速度制限を下げたとしても、それが守られなければ意味がありません。大多数の人が恒常的にスピード違反をしていたら、その全てを取り締まるのは困難です。スピードを出してしまうのは人間の本能的なものなのかも知れません。しかし、その行為が無意味で有害なことをドライバーに気づかせようとしているのです。

僅かな時間短縮と人命では釣り合いがとれません。事故を起こせば人命の損失だけでなく多方面の損害が生じ、後悔するのは明らかです。チェコでは有名な時計を止めることでそのことを訴えています。スピードを出してしまう無意味さに気づき、制限速度での走行を習慣化することには大きな意義があるはずです。





◇ 日々の雑感 ◇

イスラエル軍がガザに対して大規模攻撃、米軍はイエメンのフーシ派を空爆しており、中東がまた懸念されます。

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