April 14, 2025

トランプ関税の影響が及ぶ先

世界中が振り回されています。





言うまでもなくトランプ大統領の関税政策です。これまでの世界の自由貿易体制が破壊されかねない広範囲の高関税を打ち出し、とくに中国には高税率を課して米中対立が激化し、世界経済に激震が走りました。金融市場が動揺し、トランプ大統領の発言によって株価や為替も乱高下しています。

トランプ大統領は強気ですが、わずか13時間で一部停止を表明したのは、金融市場でのトリプル安、株安・ドル安・債券安の影響と言われています。株価やドルが下がるのは覚悟の上で、ある程度の痛みは仕方ないと考えていたようですが、株価の下落で通常は上がるはずの債券まで下げたことを政権も危惧したようです。

国債価格の下落、つまり金利がこのまま上昇すれば、企業の資金繰りや銀行の経営を圧迫し、リーマンショックのような金融危機になりかねません。国債の利払いで国家財政も危機に陥ります。金融市場の動揺に加え、当然ながら関税がアメリカ国民の生活を直撃する懸念もあります。

アメリカは工業製品の多くを中国から輸入しています。145%もの関税をかければ、中国からの輸入が大部分を占める商品の価格が跳ね上がり、それが波及してインフレに拍車がかかるでしょう。アメリカ人の生活に支障が及べば、国民の政権に対する不満も高まるに違いありません。

一次産品などであれば、関税で中国からの輸入が滞った時、代わりにアメリカ国産品が売れて代替できるかも知れません。しかし、工業製品はそうはいきません。クルマにしても、関税をかければ、米国のクルマ会社もカナダやメキシコで生産しているため、多くは同じように値段が上がることになります。

たしかに長期的には関税はアメリカが輸入する外国製品の競争力を弱めるでしょう。しかし、だからと言ってアメリカ国内産業が復活するとは限りません。製造業の復活がトランプ大統領の目指すところなのでしょうが、国内での生産を再び確立するのはたいへんです。移民対策で労働力の不足も考えられます。

業種によって事情はいろいろだと思いますが、中国製造への依存度が高い自転車業界は大きな打撃となるであろうことは間違いありません。そのまま自転車価格に125%(フェンタニルの20%を除く)が転嫁されることはないとしても、アメリカの消費者は自転車価格の高騰に直面するでしょう。

自転車が趣味という人ならご存じだと思いますが、自転車の多くは中国で生産されています。ヨーロッパブランドのスポーツバイクなどは台湾でのOEMが多いですが、その割合は一部です。台湾製でも32%まで上がる可能性がありますし、中国製の部品などを考えれば、大部分の自転車に高い関税がかかるのは間違いありません。

アメリカで組み立てられる自転車もありますが、その部品の多くは中国製です。結果として関税は回避できません。中国部品を迂回輸入しようにも、ベトナムは46%、タイは36%、カンボジアは46%などとなっています。いずれにせよ高関税は避けられません。

中国からの輸入品に対しては、800ドル以下のデミニミスルールも終了しています。中国発の格安衣料通販大手、“SHEIN”やECの“Temu”などがこれを利用して米国での販売を急拡大させたからです。細かな自転車部品についても輸入の抜け穴はふさがれてしまっています。

自転車に関してはトランプ大統領の第一次政権の時の中国との関税合戦で、すでに20%の関税がかかっています。さらに原料となる鉄鋼やアルミニウムに対する関税は、上記の追加関税とは別に25%です。最近は電動や電動アシストが増えていますが、電池などにも高額の関税がかけられ、全体として価格が上がっています。

サプライチェーンは複雑に絡み合っているため、個々には違いが出てくるでしょうが、アメリカで売られる自転車が少なくとも50%程度か、それ以上の価格上昇になることは避けられそうにありません。パンデミック以降は好調だったアメリカでの自転車販売に急ブレーキがかかるのは必至です。

自転車メーカーや小売店も含め、業績が急激に悪化し、倒産や廃業に追い込まれるところも増えると予想されています。細かい部分では商務長官による裁量も残されており、資金繰り支援なども行われるでしょうから、予想通りとは限りませんが、かなりの衝撃を受けるのは避けられないでしょう。

クルマに比べれば、自転車の製造はシンプルとは言え、アメリカ国内で部品まで含めた生産体制を確立するには長い期間がかかるでしょう。人件費なども違いますから、国内生産で輸入品のような価格が実現できるとは限りません。アメリカの自転車利用者にとって、先は全く明るくないのです。

2024年の自転車利用者参加調査によれば、全米で少なくとも1回は自転車に乗った人口は、1億1200万人となりました。これは2014年の調査開始以来最高の参加率です。若者(3歳から17歳)の自転車利用率も増加しており、自転車に乗る人が着実に増えてきていたのに、これにもブレーキがかかるでしょう。

トランプ関税については、依然として流動的であり予断を許さない部分がありますが、自転車業界にとっては、なかなか厳しいものがあります。物価が上がると、交通費を節約するため自転車に乗る人が増えるとも言われていますが、自転車自体が手に入りにくくなるとしたら、市民生活への打撃でしょう。

アメリカの製造業の復活とひと口に言っても、製品はさまざまです。関税をかければ復活するというものではありません。一律での高関税には無理があります。国によって適したものを生産しトレードするのが最適なのは経済学の基本です。アメリカファーストはいいですが、何でも国産化するのがいいとは限らないわけです。

そんな理屈が通る人でないのはわかっています。しかし、一人の偏屈な為政者の思い込みで世界中が迷惑しています。これがちょうど100年前のように経済のブロック化、そして世界戦争に発展したら目も当てられません。もちろん、日本経済に対する影響も甚大であり大きな懸念です。

スマホやパソコンなどへの関税が免除されるとの話も出ていますが、影響から考えて自転車が除外されるとは思えません。もちろん、さまざまな生活用品のうちの一つに過ぎないわけですが、少なくともアメリカでの自転車価格には、大きな影響が及ぶことになりそうです。





◇ 日々の雑感 ◇

大阪関西万博がスタートしました。並ばない万博どころか大行列のようですが、そもそも入場者数を相当制限しないと無理でしょう。今はいいですがそのうち閑古鳥が鳴いて並ばない万博が実現なんてならないといいのですが。

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