地方自治体、市区町村の数です。平成の大合併を経て半分近くに減ったわけですが、それでもこれだけの数があります。その中で最近は、「自転車のまち」などと名乗り、自転車による観光振興を進める自治体が増えています。もはや流行と言ってもいいくらいに、自転車振興をするところが増えています。
そうした自治体が集まって発足したのが「自転車を活用したまちづくりを推進する全国市町村の会」ですが、これに加入する自治体は全国417にも達しています。しまなみ海道や琵琶湖一周など、有名なところだけでなく、地元の人でも、その大多数が知らないような「自転車のまち」も少なくありません。

自転車振興に力を入れるのはいいことだと思いますが、その多くは自転車にこだわりがあるとは思えないところも多いのが実情でしょう。他の自治体を見て、やらないと損だと思うのか、自転車を打ち出すことで少しでも観光客が増えればラッキーと思うのか、その内容がお粗末なところも多いのは確かです。
一部には特徴的で意欲的なところもありますが、多くは横並びで、似たようなものが目につきます。サイクリング用マップを作ったり、ガイドツアーを企画したり、観光ポイント周遊をアピールしたりなどが多いでしょうか。ただ、それだけでは地元住民ですら大多数が知らない施策とならざるを得ません。

また、多くは「自転車のまち」を標榜しながらも、自転車走行空間の整備には力が入れられていません。ただ地図を作っただけで、特段の工夫も見られず、実際に走行する人たちのために安全も快適性も考慮されていないため、地区での自転車の利用率は、むしろ低かったりします。
インフラ整備は予算もかかりますし、簡単なことではないでしょう。しかし、自転車利用者の安全や快適性への配慮も見られないのでは、「自転車のまち」宣言など名ばかり、見かけ倒しだと見透かされても仕方ないでしょう。もう少し姿勢を示すべきではないかと思う地区も多くなっています。

もちろん、しまなみ海道のような有力な観光資源があるところばかりではないでしょう。整備されたサイクリングロードも無ければ、どこか一周といった著名な観光地もないなど、工夫しようにも難しいというところも多いに違いありません。そう簡単に自転車客を誘致できるものではありません。
それは海外でも同じですが、他との差別化にいろいろと工夫しているところがあります。例えば、自転車と言ってもロードバイクで地域を巡るばかりがリクリエーションではないと考えるところもあります。アメリカでは、比較的好む人が多いということもあって、マウンテンバイクを打ち出すところも少なくありません。

アウトドア好き愛好家で組織する全米規模の非営利団体、“
Trust for Public Land”の最新の報告書によれば、MTBの愛好家は、サイクリング目的で地域を訪れた場合、平均で416ドルを使うことがわかりました。道路を走行する人ばかりではなく、MTBが地域経済を活性化する効果も見逃せません。
冬場にスキー場となる場所で、リフト等を活かしてダウンヒルというところも多いですが、リフトが無いと無理かと言えば、そうとは限りません。バーモント州、Lipton というところにある、“
Rickert Outdoor Center”では、夏場にコースを利用してMTBライドをアピールするだけではありません。

冬にはスキーのクロスカントリーやスノーシューを楽しむ人が多く訪れます。そこで冬にファットバイクでのクロスカントリーもメニューに入れています。冬に自転車と考える人は多くないと思いますが、そこをアピールしています。それに加えて、違う切り口にも挑戦しています。
アダプティブバイクです。一般的に障害のある人向けの自転車です。それぞれの障害に合わせて調整することで、多くの人が自転車を楽しむことが出来ます。このアダプティブバイクで、雪上を走行したり、クロスカントリーなどのアクティビティを展開しています。あまり聞いたことがない、意外な提案でしょう。

マウンテンバイクやシクロクロス、グラベルバイクなどを使えば、オフロードを含むサイクリングコースが楽しめます。ロードのガイドツアーは各地にありますが、特徴を出すために、舗装路だけではなくダートコースを含むツアーを提案するところもあります。
例えば、コロラド州サライダからリードビルまで、
歴史的な駅馬車道と鉄道の沿線を辿るルートが提案されています。西部劇に出てくる駅馬車や鉄道を巡るコースは、おそらくアメリカ人にとって西部開拓時代の懐かしさ溢れるものなのでしょう。単なる観光地でなく、テーマを絞ったトレイルコースです。

マサチューセッツ州・ナンタケットという場所では、
同地の歴史を紐解くバイクツアーが構成されています。日本人などにはピンときませんが、何世紀にもわたる同地の歴史を巡るツアーは、限られた人向けかも知れませんが、ファンにはたまらない魅力を秘めたもののようです。
日本でも、歴史好きの人は一定数存在しています。城とか刀剣などのマニアの人もいます。一般的な観光地を結ぶツアーだけでなく、多少ニッチな分野であっても、マニアックな人を集めるツアーも面白いのではないでしょうか。マンガやアニメの「聖地巡礼」を自転車で巡ることも考えられます。

そうした資源も、なかなかないという場所もあるに違いありません。それならば、名物を作ってしまう手もあります。スウェーデンのヨーテボリで開催されるイベント、“
Red Bull Tandemkampen”です。参加者は、手作りでタンデム自転車をつくり、それで水上のコースに挑戦するというものです。
馬鹿馬鹿しいと言われればそれまでですが、そこが売りです。かなり盛り上がるイベントのようです。こういうナンセンスさがかえって話題になるのでしょう。これならば、観光名所は必要なく、池や川があれば出来ます。誰でも参加できますし、工作が上手でなくても構わないので、参加のハードルも低いと言えます。

こうしたイベントなら、土地の風土や歴史などと関係ありません。どこの地区でも開催できるでしょう。早い者勝ちの面はありますが、一度知名度を獲得してしまえば、他との大きな差別化になるはずです。今はSNSがありますから、バズってしまえば、こちらのものです。
こういうノリのイベントは、なかなか地方公務員が企画し開催するのは難しいかも知れません。ならば、地元の学校や学生とタイアップして企画を促し補助を出すとか、やり方はいろいろあります。日本では、こうしたイベント系の自転車振興策は少ないですが、やってみる勇気さえあれば、どこでも可能なはずです。
イベントと言っても、速さを競うロードレースや高さや時間を競うヒルクライムといった、いわばオーソドックスなレース系イベントに限られるわけではありません。工夫次第、やる気次第です。率直に言って、日本の自転車振興策は横並びで面白いものに乏しいので、どこか思いきる自治体に出てきて欲しいものです。
◇ 日々の雑感 ◇
赤沢大臣のアメリカとの関税交渉にトランプ大統領が出席するとは驚きましたが予断を許さない状況のようです。
Posted by cycleroad at 13:00│
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