June 07, 2025

ヒヤリとした場所を記録する

自転車に乗る理由はいろいろあるでしょう。


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一方で、自転車に乗らない人の理由も多々あると思います。興味がない、乗りたいと思わない、特に理由はないという人もあると思いますが、自転車に対してネガティブなイメージを持つ人もいます。疲れる、汗をかく、時間がかかる、筋肉痛になる、雨だと困るなどいろいろあるでしょう。

行楽地やサイクリングロードで自転車を借りて乗ることはあっても、日常の移動手段として、例えば自転車通勤をする気にならないという人の一番の理由が、事故や安全面の懸念です。さまざまなアンケート調査でも、どうしても自転車だと事故が心配という人の多いことがわかっています。

ProxiCycleProxiCycle

もちろん、住んでいる街にもよるとは思いますが、よく通る道路などで、自転車だと危険との印象があったりするのでしょう。実際に走ってみると印象が変わることもありそうですが、やはりクルマに脅威を感じる人は多いようです。そういう場所を避けて乗れるならば、また違ってくるのかも知れません。

自転車用のナビゲーションもいろいろありますが、ものによっては安全面を優先にルート検索することができます。しかし、このルートを選択するのに使われるデータは、道路において発生した事故の件数に基づいているのが一般的です。手法として間違いではないでしょう。

ProxiCycleProxiCycle

ただ、必ずしも正確とは限りません。つまり、事故が多数報告されるまでは、その道路の危険性が判明しなかったり、事故として報告されないような小さな接触などのトラブルや、ヒヤリとした体験などは反映されない可能性が高いでしょう。結果として、走ってみると想定より危険と感じたり、その逆もありえるはずです。

その街での自転車利用者の推奨や口コミなどを元にしているマップなどもありますが、これは一人ひとりの主観に左右されます。また、クルマの交通量などの単純なデータを元にする場合もありますが、交通量が多い道路だけど道幅が広くて安全であるなど、それらのデータと自転車の安全性が一致するとは限りません。

ProxiCycle

そこで、もっと客観的かつ、実用的なデータは取得できないだろうかと考えた人たちがいます。アメリカはワシントン大学で、コンピューターサイエンスとエンジニアリングの博士課程の学生、Joseph Breda さんらのグループです。彼らは、“ProxiCycle”と呼ばれる独自のセンサーを開発しました。

アメリカは右側通行なので、左側のハンドルの先に取り付ける装置です。ハンドルバーのエンドに装着し、その自転車の側方空間を監視するセンサーです。何か物体が検出されると、Bluetooth によって、サイクリストが携行するスマートフォンのアプリに送信するようになっています。

ProxiCycle

このアプリは独自のアルゴリズムを使って、検知した物体との距離や、それがクルマかどうかを判定します。ハンドルバーの先端から、4フィート(約1.2メートル)以内を通過したクルマがあった場合、それは近づき過ぎの側方通過車両として記録されるようになっています。

これを実際に走行するサイクリストに装着してもらい、データを収集しようというわけです。実際にその道路のそれぞれの地点に、どれほどの危険性があるか、危険と感じるかがリアルに把握できるはずです。事故発生データなどと比べて、より実感に近いデータがとれるでしょう。

初期のテストは、シアトルの街でセンサーに加えカメラを取り付けて行われました。これを検証したところ、接近通過した記録はカメラの映像と一致しており、正確なデータ収集が可能とわかりました。実際にシアトルに住んでいるサイクリスト、15人が2ヶ月間テストしたところ、2050回の接近通過が記録されました。



そして、そのほとんどは、自転車とクルマの衝突事故が、平均的な場所より多く報告されている場所でした。つまり、事故のデータとほぼ相関する結果だったのです。結果として事故データと同じなら意味がないのではなく、センサーのデータと相関性があり実際の道路の危険性に対して有用なデータと確認されたわけです。

今後、より大規模なデータ収集を行っていけば、より詳細な状況も明らかになり、独自の有用なデータ、すなわち事故のデータに現れないような危険な箇所なども判明するはずです。長く住んでいるベテランのサイクリストなら感覚的にわかっている危険な場所を、地図に落とした目で見えるデータに出来るはずです。

この装置は安価に製造でき、装着してもらっても邪魔にならないので、広くサイクリストに取り付けてもらえば、もっとサンプル数が増えていくでしょう。より正確で実感とも一致する有用なデータとなり、それをマップやナビゲーションに反映させれば、より安全に移動したいという人に役立つに違いありません。



ちなみに、この研究論文は、横浜で5月に行われた国際会議、“CHI 2025”というカンファレンスで発表されています。ワシントン大学を中心とするチームは、今より自転車に乗る人を増やすことにつながると考えています。行政などに対し、インフラの整備や改修を提案する有力な根拠にもなるでしょう。

既に自転車に乗っている人にとっても新たなルートの開拓につながったりすることも考えられます。今使われているナビアプリなどに対しても有用なデータを提供できることになるはずです。少なくとも自転車に乗らない、移動に使わない理由を減らすことに貢献できると考えています。





◇ 日々の雑感 ◇

コメ卸売業者の間で銘柄米を取引するスポット価格が急落していると報じられています。小泉農相は緊急輸入の可能性にまで言及していますし、消費者は焦って買いだめしたりせず落ち着いて様子を見たほうがよさそうです。

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