サイクルロード 〜自転車への道

道交法改正に関心が高まっています。

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言うまでもなく、自転車への青キップの導入です。足元では多少落ち着いてきましたが、決定以降多くのメディアで取り上げられ、自転車関連のニュースもこの関連がとても多い期間が続きました。論点はいろいろありますが、自転車への青キップということで新しい制度への注目や懸念ということもあったようです。

反則金の金額の多寡や、どのような違反が該当するかということもあります。なかでも、自転車の歩道走行を取り締まるという方針が伝わったところに反響があったようです。これに関して、時々取り上げている自転車評論家の疋田智さんのプレジデント社の記事を取り上げてみたいと思います。

やっぱり｢すべての自転車が車道を走る｣は無理…｢青切符問題｣で改めて露呈した日本の道路インフラの"欠陥"

国民の批判･不安に対する警察の｢言い訳｣

危険な自転車の運転を取り締まる「青切符」が2026年4月からスタートする。果たして成果は出るのか。自転車評論家の疋田智さんは「現状の道路インフラの課題を解決しないかぎり、『自転車は車道』は実現しない」という――。

■青切符パブコメの焦点は「歩道」

対象となる交通違反は113項目もあるので、どんな行為が取り締まられるかを知りたい方は、前回記事の図表1・2を参照してほしい。※歩道を走る自転車は全員「反則金6000円」？…日本の危険な道路で始まる「青切符取り締まり」への最大の懸念

テレビや新聞で「これからは歩道走行していると青切符が切られます」などということが喧しく報道され、これに関して警察庁が1カ月間、パブリックコメントを募集した結果、5926件もの意見が寄せられたという。

反則金が高すぎる、いや、安すぎる、などの指摘なども色々あったそうだ。しかし、最も反応があったのは次の項目だった。

「歩道通行しただけで反則金の対象になるのか」
「現状を見ると、自転車で車道を走るのは恐い」
「まずインフラを整えてからでないと、自転車が歩道を出ることはできない」

つまり歩道の自転車に関して青切符が切られることに対しての不安、というより反対意見だった。パブコメ・マジョリティは圧倒的に「現状で自転車が車道を走るのは無理」だったのだ。

■やはりママチャリの車道走行は推奨できない

私は車道を走ることが不可能だとは言わない。というより、私自身はほぼ100％、自転車で車道を走る。乗っているのはロードバイクかクロスバイク。要するにスポーツ系でヘルメットも常時かぶっている。

そして、私自身は「長い目で見たら自転車は非歩道を走るほうが事故は減る」ということを知っている。欧州自転車先進国を見れば一目瞭然だ。だから今日も車道を走る。

ただ、現状の日本のママチャリや低速域で走る高齢者の自転車を見ると、彼ら・彼女らにそれができるとは思わない。特に、前や後ろに小さな子供を乗せた若いママたちだ。車道に出ろ？　何を言ってるんだと思う。歩道とは彼女たちを守るためにあるんじゃないかとすら思う。それに現状の車道を見たことがあるのかと。

■通せんぼする車を解消しないと実現不可能

違法駐車がずらりと並び、自転車レーンすら通せんぼをしている。こんな場所を、危険を避けながらママチャリが走るのは不可能だろう。少なくとも現状のインフラを再構築し、取り締まりを強化しないと(自転車だけじゃなくドライバーに対しても)、「自転車は車道」は実現不可能だ。パブコメではそのことが指摘され、そのことに警察も反応した。NHKの報道によると警察の見解はこうだ。

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自転車で歩道を通行する行為については、歩行者に危険が及ぶ場合などを除いては反則金の対象とならないことなど基本的な考え方をまとめました。(中略)そのうえで、青切符による取り締まりについては交通ルールを守って歩道を通行している場合には対象とせず、交通事故に直結するような危険な行為をした場合や警察官の警告に従わずに違反行為を続けた場合など、「悪質・危険な行為」に限って対象にするとしています。
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一見「なるほどそうか」と思う。ところが、その「危険行為」が何かというと、たとえば「スピードを出して歩道通行し、歩行者を驚かせて立ち止まらせた場合」などだという。

■普通に走っているだけで「危険行為」に

では、そのスピードとはどの程度かというなら「徐行ではないスピード」のことになるそうだ。では徐行とはどの程度か。警察庁の見解では「何かあったときにすぐに停まれる時速7.5キロ程度以下のスピード」だそうだ。

しかし、自転車の平均的な速度は時速20キロ前後、よほど遅いママチャリでも時速15キロ。つまり、現状、全員違反なのだ。今現在、歩道を走ってる自転車は全部取り締まり対象。反則金は6000円。だから、無理なんだと警察だって分かってるだろう。取り締まる人数だって足りない。

■「セーフ」「アウト」の境界線が不透明

だいいち誰が判断するんだろうか、その「危険行為」を。アンパイア(審判員)が必要な違反を取り締まるのは無理なのだ。このままでは今回もまた同じだ。また「2週間程度のキャンペーンやって、運が悪いスケープゴートを捕まえて、テレビに『危険ですね』『自転車もマナーを守って』と言わせて、期間が過ぎたら元の木阿弥。

せっかくの青切符もまた不発、大失敗だ。残念なことだ。パブコメ、もちろん私も出したが、警察に言いたいのは次のことだ。

■「これは危険なんだ」と理解できるか

自転車の青切符導入には賛成ですが、ぜひ実効性を確保してください。この「実効性」こそが最も重要です。いつものように2週間程度マスメディアを集めて取り締まりパフォーマンスに終わるのではダメです。その実効性を確保するために以下のことを提案します。

今回の政令案で示された反則行為の項目(113項目)は、多岐にわたり、というより、多岐にわたりすぎ、いかにも総花的で、歩行者や自動車運転者はもとより自転車利用者や警察官双方にとっても、理解と運用が困難になることが懸念されます。

現状を鑑みて、たとえば「歩道走行の取り締まり」など、実効性があるでしょうか。取り締まりというものは「捕まったのは(反則金とられたのは)運が悪かった」になると最悪です。

「なるほど、これは危険なんだ、事故に直結するんだ」と違反者に分からせなくてはなりません。そのためには取り締まりの重点項目を絞り込むべきです。

重点項目とは事故に直結するであろう項目です。例えば、信号無視、通行区分違反(車道逆走)、遮断踏切侵入、携帯電話使用、と、この程度で十分です。飲酒はもちろん赤切符。

逆に、113項目の中には「泥はね運転」「合図不履行」「警音器使用制限違反」などというものが存在しますが、こんなものの取り締まりに、事故防止の意味などほぼありません。歩道通行や徐行場所違反なども、次のキャンペーン以降にまわすべきです。

■標的にすべき「言い逃れができない違反」

青切符は自転車事故を減らすための切り札でしょう。いわば千載一遇のチャンスなのです。今なすべきは「こんな危ないことをすると、自転車も青切符で取り締まるんだぞ」「今回は本気だぞ」という気合と実行です。

そして、そこにアンパイアが要るものをもってきてはなりません。行為自体が確実にダメなもの。言い逃れがきかないものを重点的に取り締まってください。つまり「徐行違反」などは、今回はいらないのです。

この点、「信号無視」「逆走」「携帯ながら」「遮断踏切侵入」などは本人も悪いと分かってやる事項です。ここに限定して「これだけは厳格に青切符を切る」と、ここが肝要です。重点化の判断基準として、次のものが挙げられるでしょう。

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● 重大性(他人に損害を与える確率や程度が大)
● 明確性(違反が明確に判断できる)
● 回避容易性(他の手段を選ぶことで反則行為を回避することが容易)
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これらの観点から取り締まり対象を絞り込んでください。また、このように重点化された反則行為については、テレビ、ラジオ、新聞、インターネット、SNS等あらゆるメディアを活用して自転車利用者のみならず歩行者、自動車運転者にも周知徹底を図るよう努めていただきたいと思います。（6/26　プレジデント）

基本的に疋田さんも、自転車利用者の立場から如何に秩序のある交通基盤を確立すべきかということを考えられているので同感する部分もあります。ただ、多少意見の違う、あるいは考え方に相違のある部分もあります。私の意見を少し書いてみたいと思います。

まず、「やっぱり『すべての自転車が車道を走る』は無理」は最初からわかっていたことだと思います。私もほぼ１００％車道走行しますが、ママチャリに乗る主婦や高齢者などに車道走行を強いるのには、現状では無理があると、かなり昔から書いてきました。

四半世紀以上、日本の道路行政は自転車に歩道走行をさせてきました。道路の整備もそれを前提に行われ、歩道の上に線をひいた自転車通行帯などもつくられてきました。自転車を通行させるため、歩道ばかりを拡幅してきており、無駄に広い歩道もあります。

歩道を拡張するなら、その幅の何割かを車道部分と一緒の路面にして車道に自転車レーンを整備すべきだとも、かなり以前から主張してきました。しかし、警察庁も国土交通省も歩道走行させるという立場でしたから、歩道ばかり広げ、その結果、車道には自転車の通行空間が乏しいのが現実です。

実際にクルマと混在して走らざるを得ないようなところもあり、そのような場所をママチャリの利用者に通れというのは無理なのは一目瞭然です。ですから、今回の青キップで露呈したというより、最初から無理がありました。自転車インフラを整備しなければ車道走行が実現しないというのも、以前から言われてきた通りです。

たしかに、歩道走行しただけで青キップかと懸念が広がりました。しかし私は、そうはならないはずと何度も書いてきました。事実上、多くの場所で歩道通行を認めざるを得ないのは誰が見ても明らかですし、それを片っ端から取り締まるのも物理的に無理です。そこを懸念するのは無意味だと指摘してきました。

警察の見解も発表され、下記のようになったわけです。
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自転車で歩道を通行する行為については、歩行者に危険が及ぶ場合などを除いては反則金の対象とならないことなど基本的な考え方をまとめました。(中略)そのうえで、青切符による取り締まりについては交通ルールを守って歩道を通行している場合には対象とせず、交通事故に直結するような危険な行為をした場合や警察官の警告に従わずに違反行為を続けた場合など、「悪質・危険な行為」に限って対象にするとしています。
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このことについて、疋田さんは徐行の速度などを挙げ、取り締まるのは無理だとしています。そうかも知れませんが、私は可能だと思っています。つまり、時速何キロかというより、危険な歩道走行をしている人がいたら警告し、改めなければ摘発する、あまりに危険なら即摘発ということは可能でしょう。

警察の見解は、そのように読むべきだと思います。要は歩行者が危険かどうかです。現状でも、歩道で歩行者を縫うようにスピードを出して走行している人を見ることがあります。実際に危険ですし、歩行者の多くも思わず立ち止まります。苦言を呈する歩行者も多いはずです。これを取り締まらなければ事故は減りません。

相対的に若い人に多いと思いますが、急いでいるのか、あるいは自転車で出せるスピードを出したいという身勝手な理由で速く走り抜けようとしています。歩行者への危険や迷惑など頭にないのでしょう。こういう例は、時速何キロかはともかく、徐行する意志はなく、危険は明らかなので摘発すべきでしょう。

「だいいち誰が判断するんだろうか、その『危険行為』を。アンパイア(審判員)が必要な違反を取り締まるのは無理なのだ。」と書いていますが、これはナンセンスです。審判員などいなくても、現場で警察官が現認すれば摘発できます。例えばクルマの一時停止などでも、審判員などいなくても取り締まられています。

警察官によって多少は違ってくるかも知れませんが、危険な走行と現認したら取り締まるべきであり、実際に取り締まると思われます。現状で自転車の歩道通行は認めざるを得ないけれど、あくまで歩行者優先であり、スピードを出して歩行者を縫うような走行をしたら青キップとすれば問題ないと思います。

むしろ、せっかく青キップ導入という、現状のルール無視の混沌としたカオス状態を変えるという点で、千載一遇のチャンスなのですから、歩道走行する自転車に対して、一定の秩序をもたらすためにも、それを徹底すべきだと思います。歩道の自転車通行可と矛盾する話ではありません。

疋田さんは、「『徐行違反』などは、今回はいらない」と書いていますが、私は単なる徐行違反ではなく、歩行者を危険にさらす通行は断じて取り締まるべきであり、そうでないと青キップ導入の意味がないと思っています。歩道では歩行者優先を根付かせるチャンスです。歩行者の立場なら誰もが賛成するでしょう。

「『歩道走行の取り締まり』など、実効性があるのか」と心配されていますが、警察官の現認を持って警告と摘発を粛々と行っていくことで、危険な歩道走行の自転車を減らしていくべきです。疋田さんは無理だと考えているようですが、この、歩道を傍若無人に走行させないことには意味があると思うのです。

私は、今の自転車ルールの混沌としたカオス状態の根源は、自転車の歩道走行にあると思っています。歩道を通ることで自転車に乗るのが歩行者の延長のように感じている人が大多数です。ですから歩行者感覚で逆走したり、スマホを見たり、信号無視したり、突然道路を横断したりと、ルールが守られないのです。

本当はヨーロッパの自転車先進都市のように、車道走行を徹底して、自転車が車両であるとの認識が根付けば、ルール違反も減り、秩序も醸成されるはずです。しかし、現状でインフラが乏しい日本で車道走行徹底は無理なので、せめて歩道を通るのは例外であり、歩行者優先しないと青キップという秩序を目指すべきでしょう。

ヨーロッパの都市で自転車に乗ればわかりますが、自転車は車道走行しか出来ず、自然とみな秩序に従うようになります。車両という感覚で走るようになります。逆走したり信号無視したりすると走りにくいですし、流れに従って車両として停止し、通行したほうがラクで自然だからです。

この部分が日本に無く、歩行者の延長のような感覚で乗るのがルール無視で無秩序となる原因だと考えています。ですから、自転車インフラの整備が急務なのですが、現状では歩道走行させながらでも秩序を形成していくしかありません。その中で早急にインフラ整備していくべきでしょう。

疋田さんは、「対象となる交通違反は113項目もある」ことを問題とされています。たしかに覚えきれません。ただ、警察の肩を持つわけではないですが、これは仕方ないことでしょう。クルマの青キップだって、細かい違反が多数あります。実際には取り締まられていませんが、法律で決まっている以上、違反とするしかないでしょう。

例えば、クルマの泥はね運転で青キップを切られたという話は聞いたことがありませんが、違反は違反です。青キップに含めておくしかありません。逆に泥はね運転では摘発しないと明らかにすれば、法律違反を認めることになってしまいます。歩行者に配慮するという基本的な理念もおざなりになってしまいます。

自転車の１１３項目の違反はたしかに多すぎですが、そこに目くじらを立てても仕方ないと思います。結局は重点的に取り締まられる項目は決まってくるでしょうし、実質的に１１３項目ではなくなるはずです。法律で決まっているという建前と取り締まる本音が違うことはいくらでもあります。

「これだけは厳格に青切符を切るのが肝要」としていますが、実質的に絞られてくるはずです。そうすれば実効性も上がるでしょう。実際に取り締まられるのは信号無視、車道の逆走、遮断踏切侵入、携帯電話使用などになってくるでしょうし、誰も１１３全部で即青キップとは思っていないでしょう。

「言い逃れができない違反」を取り締まるのは当然であり、そうなると思われます。そこを重点的にやるべきなのは同感です。徐行違反を積極的に取り締まれとは言いませんが、自転車の歩道通行は認めるけれど歩行者優先という観点から、歩行者が危険となる行為の取締りは必要だと思います。

おそらく、信号無視、逆走、スマホ使用などに警告がなされ、青キップの適用となっていきそうです。たしかに人員的な限界はあるとしても、これらが取り締まられているとなれば、警戒してやめる人は増えるでしょうし、少しずつでもそれらの違反が減っていくことが期待されます。

疋田さんが心配するように、２週間程度のキャンペーンでテレビに啓発させ、期間が過ぎたら元の木阿弥とはならないと思います。すでに現在できる赤キップの取締りは強化されていますし、青キップのスタートに向け、街頭での啓発を始めるなど、着々と準備しているように見える地域も少なくないようです。

ある程度の周知期間は必要だとしても、制度として自転車青キップを導入した以上、それを活用して違反を減らさなければ、そちらのほうが警察の怠慢として問題になるはずです。大多数の人が歩行者感覚で自転車に乗るという法令無視を生む元凶までが是正されるかは見通せませんが、良い方向に向かうことを期待したいものです。

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◇　日々の雑感　◇
トランプ大統領はプーチン大統領の対応に強い不満を示し追加制裁検討、なめられていると悟ったのでしょうか。