July 19, 2025

交通安全は生涯にわたる技術

多くの人が命を落としています。


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交通事故です。昨年の交通事故死者数は2663人、これは事故当日に亡くなった方の数なので、重傷を負って搬送され翌日以降に亡くなった人は含まれません。負傷者数は36万2131人に上るので、結果として交通事故により亡くなった人はさらに多いのは間違いありません。

もはや交通事故は日常茶飯事であり、事故死者数も単なる数字になってしまっています。しかし、これが身内に起これば、大きな不幸です。病気などと違って、ある日突然大事な人の命が失われるのは、残された人にとっても大きなショックであり悲劇的な出来事なのは間違いないでしょう。

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このような不幸を少しでも減らすために、その原因となりうる交通違反の取締りが行われています。来年から導入される自転車の反則金制度、いわゆる青キップは自転車の交通違反の取締りを効果的にする方策ですが、大きな意図としては、交通事故による死亡や後遺症などの不幸を減らすためと言えるでしょう。

ただ、反則金制度だけで交通違反を全て撲滅するのは困難です。前回も指摘しましたが、道交法を知らないため意図せず違反をする人もいます。自転車に乗る人は膨大な数ですし、日常的に一時不停止をする人なども多く、それらをいちいち取り締まるのは現実的ではありません。

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反則金制度とともに、自転車のルールの教育や、守るべき道交法を広く周知徹底する必要があると書きました。ただ、これも実際には困難な部分があります。警察や自治体も交通ルール周知のため啓発活動を行っていますが、必ずしも遵守されているとは言えません。どうしたらルールが守られるでしょうか。

イギリスに一つ参考となる制度があります。政府資金による自転車向け道路安全教育プログラム“Bikeability”です。2007年に開始され、これまでに約600万人の子どもに、イギリスの道路で安全に自転車に乗るために必要なスキルを身につけさせてきました。

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単に道路交通法を学習させるものではありません。座学で法律の知識を教えても、多くの子どもにとっては退屈で眠気を誘うもので、なかなか身につかないでしょう。このプログラムでは、自転車に乗るスキルと併せ、従うべき自転車のルールを学び、なぜそのルールが必要で有効なのか実体験として理解させるのです。

例えば4歳では、バランスバイクからペダリング、止まる、曲がるといった基本的なスキルから練習します。校庭など安全な場所で、片手を離して合図を送れるようになるまでを目指します。9歳からは、インストラクターと一緒に公道に出ます。実際の道路でのリスクや危険を察知し回避する方法を覚えます。

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11歳以上になると、より複雑な構造を含む、交通量の多い都市部の公道での上級コースへ進みます。その中で、単なる自転車に乗る技術だけでなく、必要なルールや危険を回避するノウハウを学び、事故に遭わずに安全に自転車に乗れることを目指すカリキュラムとなっています。

このように子どもの頃に自転車に乗るスキルやルールなどの基本を身につけておけば、生涯にわたって安全に自転車に乗るための基礎となり、自信がつきます。交通コンサルタントの実施した最近の調査で、このプログラムを実施した地区では交通事故による自転車の死亡者数、重傷者数が有意に減少したことが確認されています。

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Bikeability”を受講した子供たちの追跡調査をした結果、子どもが自立して走行することを快く受け入れた保護者の数は大幅に増えました。また、レジャーなども含めて自転車に乗る子どもの数が増え、成人した後も週に3回から4回ほど自転車に乗る割合が9ポイントほど高くなることも判明しました。

このことは、交通安全が進み、死傷者が減るだけでなく、当人の健康増進にも寄与します。マクロでは、国の医療費の低減につながります。イギリスでも近年、環境意識が高まっていますが、将来的にもクルマの利用を減らし、自転車に乗り換える人を増やすなどの社会的効果も見込まれています。

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もっと基本的で実用的な知識も習得します。例えば、サドルを適正な高さにすれば、乗り心地、こぎやすさが全然違うことを知ります。日本でもサドルが低いまま乗っている子どもや大人を多く見かけますが、このことだけでも自転車に乗る際の快適度が大きく違ってくるはずです。

タイヤの適正な空気圧などもそうです。低いままだとペダルが重いですし、やはり快適度が違います。ブレーキの調整とか、パンク修理などの簡単なメンテナンスや修理が出来ること、その必要性を理解しているだけでも、その後の自転車生活は大きく違ってくるはずです。

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“Bikeability”は基本的に学校教育に組み込まれます。ただし、国の自転車向け道路安全教育プログラムではありますが、それを利用するかは各学校の校長や関係者の判断です。国が強制的に組み入れさせることは出来ません。日本の戦前の軍国教育ではないですが、教育の内容は国が一方的に強いるものではないからです。

時間的にも何を時間割に入れるかという問題があるでしょう。数学や国語などの時間を増やしたり、教養や道徳、美術や文学を入れるという判断もあります。その中で、“Bikeability”、自転車教育は、いわばライフスキルであり、生涯にわたって役に立つ有効なプログラムだと強調しています。

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基本的には体育の授業に組み入れられることになるでしょう。似た事例に水泳の授業があります。子どもが泳げるようになることは、水の事故で命を失わないために有効との考え方です。ただ、一般的に水難事故で命を落とす子どもの数より、自転車事故で亡くなる子どもの数のほうが2桁〜3桁多いとされています。

子ども達には、プールの授業やサッカーのほうが人気があるかも知れません。でも、それらと択一ではありません。自転車に乗らなくなる子供もいるでしょうが、乗らなくても交通安全の知識は無駄にはならないはずです。今のところ、イングランドの7割ほどの学校で導入されています。



日本でも、最近はプールの授業を無くす学校が増えているそうです。建設費も維持費もかかりますから、仕方ない部分もあるのでしょう。しかし自転車の授業は校庭や公園、そして身近な公道で出来るぶん、コストは低くすみます。そして、子どもの事故死の確率を下げる点で有益なのは間違いありません。

デジタルで、子どもの習得内容を保護者に伝える仕組みもあります。インストラクターの評価なども伝えられるため、保護者の安心感は上がります。子どもが実際に技術を習得して自転車に乗る姿を動画などで確認することで、道路で自転車に乗る許可を出す保護者も増えると言います。



この“Bikeability”は、欧州各国の関係者からも高く評価されています。効果も確認され、すでに20年間の実績がありますが、その実施中に深刻な怪我をした子どもは一人もいません。欧州の自転車先進国でも見習おうとする動きが増えています。日本でもルールを知らずに乗っている子どもが多い中、有効なのは間違いないでしょう。

このプログラムにより、子供たちは交通ルールを理解し、なぜそれが必要なのか『納得』することになります。また、具体的な安全確認の方法とか、実際の道路上に即して必要なスキルも身につけます。プログラムに参加する子どもが増え、修了した人達の年齢が上がっていけば、社会全体の交通ルールの遵守度も上がっていくでしょう。

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子どもの習熟を見て、多少は保護者の理解が違ってくる可能性はあります。なかには交通安全の知識を見直す大人もあるかも知れません。しかし、基本的には学校教育であり子供向けです。一般的に、大人に対してこのようなプログラムへの参加を期待するのは難しいでしょう。

その意味で、日本でも交通ルールの周知徹底という点の効果は限定的です。ただし、子どもに教育していけば、その子ども達が大人になっていくことで、社会の交通ルールの理解度は上がっていくに違いありません。時間がかかり、即効性はありませんが、日本でもこのようなプログラムを整備するのも一法ではないでしょうか。





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