March 10, 2026

自分には自転車など縁がない

冬季パラリンピックが始まりました。


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ミラノ・コルティナ2026パラリンピックです。野球のWBCと日程がかぶっていることもあり、先月のオリンピックと比べて、どうしても注目度が低めなのは否めませんが、日本からも44人の選手が全6競技にエントリーし、熱戦を繰り広げています。

言うまでもなく、身体に障害のある人を対象とした世界最高峰の障害者スポーツの総合競技大会です。夏季のパラリンピックは1960年から、冬季大会は1976年から始まりました。さらにパラリンピックの起源とされる大会があり、1948年にイギリスのストーク・マンデビル病院で行われた競技大会とされています。

Wheels for AllWheels for All

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この病院は第二次世界大戦で一部の身体機能を失った軍人のためのリハビリ治療を行っていました。ここの病院の医師、ルードウィヒ・グットマン博士が提唱した競技会であり、彼はパラリンピックの父として知られています。4年後の1952年には国際大会となっています。

グットマン博士は、神経外科医として下肢の麻痺などの治療や研究にあたっていましたが、脊髄損傷患者に対する治療として、きわめて有効な方法の一つがスポーツだったのです。リハビリテーションという考え方、用語として確立したのも、この頃でした。

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それ以前には一般的でなかった方法ですが、戦傷を負った患者に、いつまでもベッドに寝ていることを許さず、一日でも早く、わずかであっても身体機能を回復させるため、スポーツをやらせたのです。少しでも動けるようになった患者は、卓球をやらせたり、プールで泳がせたり、何かのスポーツをさせました。

当時は、無茶だとか症状が悪化するなど反対意見も多かったといいますが、その有効性が明らかになり、スポーツの効能が広く認められるようになりました。このリハビリとしてのスポーツの延長として、パラリンピックが開催されるようになったのです。ちなみにパラリンピックという言葉は第2回の東京大会で初めて使われました。

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ところで、パラリンピック以外でも、障害に対するスポーツの有効性を広げようとしている団体があります。イギリスのマンチェスターを本拠として活動する、包括的自転車ネットワーク団体、“Wheels for All”です。障碍者や疾病などを持つ人に自転車に乗ってもらうことを目指しています。

パラリンピックに出場するような人だけでなく、障害を持つ人はたくさんいます。その多くは自分がスポーツ、例えば自転車に乗るなんて考えもつかない人たちです。初めから無理だとして自転車になど関心もなく、まったく縁遠い人たちがいるのです。

Wheels for AllWheels for All

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そのような人、障害や慢性的な健康問題を抱える人に、自転車を試してもらう機会を設けています。一般的な自転車ではなく、各種のアダプティブバイクを用意し、今まで自転車に乗れなかった人、乗ろうともしなかった人にも自転車に乗ってみてもらうのが目的です。

例えば下肢に障害があっても、アダプティブバイクで練習すればペダルをこげるようになる人もいます。自分では夢にも思わなかったことに驚くとともに涙を流して喜ぶ人もいます。下肢を切断して叶わない人なら、手でこぐハンドバイクという手もあります。ハンドバイクの存在を知らない人も多いのです。



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視覚障害があって乗れるわけがないという人には、ボランティアが横に乗るタンデムバイクに乗せます。一人では乗れないかも知れませんが、風を感じ、自転車で走るという経験をして感激します。3輪や4輪の横に並んで乗るタンデムバイクなら、家族と楽しく会話しながら乗ることもできます。

自転車に乗ることで、今まで動かなかった足の可動範囲が広がったり、思わぬ機能回復が得られ、3輪のアダプティブバイクでなら一人で乗れるようになる人もいます。辛いリハビリではなく、楽しく自転車に乗るので得られる効果もあるようです。自転車に乗ってみようと思いもしなかった人が自分で感動するのもわかります。

Wheels for AllWheels for All

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単に身体機能の向上や健康の増進にとどまりません。文字通り人生が一変したという参加者も少なくありません。今まで考えたこともなかった自転車に乗れるようになり、自由に移動できるなんて夢にも思わなかった人が、自分の人生が変わったと感じるほど大きな出来事なのです。

Wheels for All”はイギリス最大のインクルーシブ・サイクリング団体です。障害の有無、国籍、性別、年齢に関係なく全ての人がサイクリングの爽快感、喜び、そして自分で移動できる自由を感じてもらうことを目指しています。自転車の場合はスポーツとして身体を動かすだけでなく、移動の自由にもつながります。



Wheels for All

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自転車に乗ることの効果で、単に障害や慢性疾患のリハビリに役立ったというだけにとどまりません。調査によれば参加者の73%が健康状態の管理または改善に役立っていると回答しており、69%が孤独感や社会的孤立の軽減を報告しています。

昨年はイギリス全土に活動を広げ、1756回のサイクリングセッションで27499回のライドを実施しました。前年より37%の増加です。推定2250万ポンドの社会的価値を生み出し、1ポンドの投資につき2250ポンドの社会的価値を生み出した計算になります。社会的にも意義のある活動と言えるでしょう。

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オリンピックを見て、自分も何かのスポーツをしたくなる人は多いでしょう。ただ、パラリンピックを見たとしても、自分に何かのスポーツが出来るとは考えられない人たちがいます。自分が自転車に乗るなんて考えも出来なかった人に、サイクリングの楽しさや移動の自由が広がるのは素晴らしいことだと思います。


パラリンピックブレイン
中澤 公孝
東京大学出版会
2021-02-15



◇ 日々の雑感 ◇

原油先物の急騰で国内の物価上昇と中間選挙への波及を恐れ、トランプ大統領は戦闘が間もなく終わると事態の鎮静化に躍起ですがホルムズ海峡の航行が困難な状況は続いており先行きが見通せる状況とは思えません。

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