April 09, 2026

インフラ以外にも必要なこと

イギリスも自転車の活用を進めています。


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自転車先進国のデンマークやオランダの後を追って、近年は急速に自転車の活用を推進しています。このブログでも、ロンドンで2005年に起きたバスや地下鉄を狙った同時多発テロの影響や、ロンドン市長から首相となったボリスジョンソン氏の政策など、いろいろ取り上げてきました。

まだまだ十分とは言えませんが、自転車インフラの整備も進めています。コロナのパンデミックもきっかけとなり、ロンドン圏でも通勤など自転車に乗る人が大幅に増えています。自転車政策を進め、走行環境の充実も図ってきました。ただ、まだまだ問題もあるのが現実です。

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そんなロンドンで最近話題となったのが、Brompton 社の提供するプログラムです。自転車を盗まれてしまい、移動手段を失ってしまったロンドン市民に、代替の自転車が見つかるまでの間、無料で自転車をレンタルするというサービスを打ち出しました。

いつものように自転車に乗り、いつものように駐輪したのに、戻ってきたら愛車がなかったら大きなショックです。経験した人もあると思いますが、頭の中が真っ白になってしまうでしょう。乗りなれて馴染んでいますし、愛着もあり、いろいろと苦楽をともにしてきた愛車を失うショックは辛いものがあります。

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さらに、自転車の移動を前提としていたため、この後どうやって移動しようかと途方に暮れるに違いありません。警察に盗難届を出すなど手続きもありますし、当座の代替の交通手段をどうするか考えたり、目的地や関係先などに、遅延の連絡などが必要になるかも知れません。

Brompton 社はフォールディングバイクで世界的に有名なイギリスのメーカーです。その、Brompton 社がロンドン市民に助け舟を出す形です。愛車を盗まれたショックは拭えないにしても、当座のアシは確保できます。しかも無料です。これはありがたいサービスではないでしょうか。

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方法も簡単です。メールを送信すれば、同社のアプリを通じてコードを受け取れます。それを提示すれば、市内各地にある同社の店舗、あるいはレンタルステーションで代わりの自転車を借り出すことが出来ます。いずれは新しい自転車を購入するにしても、全く予定外の出来事でしょうから、つなぎの自転車は助かります。

なかなか太っ腹なサービスです。もともとロンドンで生まれて愛されたブランドですから地元への恩返しもあるのでしょう。とは言え、Brompton 社のフォールディングバイクのユーザーでない人が大半でしょうから、同社のモデルを使ってもらうことで、その良さや利便性などを知ってもらい、販促につなげる意図もありそうです。



そのあたりは下衆の勘繰りですが、同社の担当者は近年、ロンドンでも自転車で移動する人が劇的に増加しているにもかかわらず、自転車盗難も大幅に増えているのは悲しいことだと述べています。そして自転車を盗まれた人の約4分の1は二度と自転車に乗らなくなるという調査もあるのです。

自転車インフラの整備など自転車政策を進めてきたロンドンに、まだまだある問題の一つは自転車盗の多さです。届けない人もいるので推定ですが、ロンドン市内だけで年間4万台もの自転車が盗まれているとされています。そして、そのうち回収されるのは、わずか2%と言われています。

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イギリスのネット掲示板などを見ると、いかに盗難被害に遭う人が多いか、ロンドンっ子がいかに自転車盗にうんざりしているかがわかります。もちろん、日本を含め他の国でも自転車盗はありますが、ロンドンでの被害の多さは突出しているようです。近年の不法移民・難民の急増を指摘する声もあります。

この状況を受け、ロンドン警視庁の無策ぶりが批判されています。調査によれば回答者の74%が自身か家族が自転車盗被害を経験しており、79%がロンドン警視庁が何の対応もしなかったと回答し、69%が警察の対応に対して不十分だと不満を述べています。

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さらに問題は、昨年イギリス交通警察が、駅構内に2時間以上放置された自転車の盗難の捜査を行わないと表明したことです。アンケートでは警察が何の捜査も行わなかったと回答する人が多かったわけですが、2時間経過したら防犯カメラの映像確認すら行わないことを正当化するような表明です。

背景には自転車盗の多さがあり、自転車盗の捜査にばかり時間をとられてしまうと、他の相対的に重大、被害の大きな犯罪の捜査に使う時間が減ってしまうからだと警察は説明しています。また、2時間経過以外にも価格が200ポンド未満の自転車は捜査対象外としました。

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イギリス交通警察の肩を持つつもりはありませんが、やむを得ない事情もあるのでしょう。あまりに自転車盗の被害件数が多いため、人手も時間も足りず、警察も優先順位をつけざるを得ないというわけです。相対的に重要度の高い事件、被害額の大きい事件を優先せざるを得ないのは理解できます。

しかし、この発表は各方面に波紋を広げました。事実上、自転車盗は犯罪とされないことになりかねません。犯罪抑止効果がなくなり、ますます被害が増加する可能性があります。所得の低く、新しく自転車を買う余裕がない層には打撃となりますし、せっかく推進されてきた自転車利用が、首都では阻害されかねません。

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各方面から大きな批判を受けて、結局警察のこの決定は撤回されました。防犯カメラの映像を調べたり、目撃者がいないか調査したり、実行可能なすべての捜査をすると責任者が表明する事態に追い込まれました。自転車盗の「非犯罪化」は、より件数を増やし治安の悪化につながり、悪循環を招くのも確かでしょう。

ちなみに、日本と違ってイギリスでは無施錠で盗まれているわけではありません。きちんとロックしていても、グラインダーやボルトカッターなどを使って盗まれてしまうのです。路上から盗むのは敷居が低く、換金も容易で「割に合う」犯罪となっているのでしょう。足がつかないよう海外へ売りさばく例もあるようです。

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衆人環視の場所なら盗まれにくいと考えがちですが、関係ないようです。誰かが自転車のカギをいじっていても、自分のものかも知れませんし、通行人は誰も気にもとめません。明らかに泥棒と思われても他人事です。わざわざそれを咎めて犯行を阻止する人はいないでしょう。逆ギレされて暴行を受けないとも限りません。

ユーザーも、二つ以上のロックをするなど対策をしています。それでも盗まれることがあるのが現状です。通勤などには盗まれてもいい古くて安物の自転車使うという方法もありますが、それだと毎日の快適性、楽しさがスポイルされてしまうのが難点です。盗難保険も高くなっておりコストがかかります。

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やはり、警察に自転車盗の検挙を進め、なんとか割の合わない犯罪にしてもらうしかありません。被害額は大きくないとしても、青少年の非行の入り口にもなり、地域の治安が悪化し、それが凶悪犯罪につながることもわかっています。いわゆる「破れ窓理論」です。件数が多いからと諦めてしまったら治安維持は破綻します。

自転車を社会で活用していくためには、自転車インフラの整備や交通ルールの順守、駐輪場の充実などだけではなく、自転車盗を減らすことも重要な要素ということになります。簡単に盗まれてしまうのでは、自転車に乗っていられません。あらためてそのことが痛感されているのがロンドンの事例と言えそうです。





◇ 日々の雑感 ◇

アメリカとイランが一転停戦に同意したのはよかったですが、イスラエルがレバノンへ大規模攻撃を継続、ホルムズ海峡が再閉鎖などの報道が相次いでおり、このまま事態終息に向かうかは予断を許さないのが懸念されます。

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