June 05, 2026

観光振興には差別化が不可欠

自転車で観光振興を目指す自治体が増えています。


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この傾向については何度も取り上げていますが、全国の400以上の自治体が自転車を活用したまちづくりを表明しています。しかし、横並び志向が強いのか似たような施策が多く、力を入れているわりには、あまり目立っていないのが実際のところではないでしょうか。

もちろん、そう簡単な話ではありません。自転車のまちを標榜する自治体は多いですが、それだけで観光客が集まるわけがありません。そこでイベントを開催したり、サイクリング環境をアピールするなど知恵を絞ることになります。しかし、一口にイベントと言っても簡単に開催できるものではないでしょう。

Tour la NuitTour la Nuit

コストもかかりますし、リスクもあります。事故なども起こりえますし、近年は熱中症で搬送者が出たりする懸念もあります。温暖化なのかエルニーニョ現象なのかは別として、年々夏が暑くなっているのは確かでしょう。エルニーニョでもラニーニャでも猛暑の夏になっている気がします。

他のイベントでもそうですが、主催するにしても後援するにしても、開催場所の自治体には一定の責任が問われることになります。安全配慮義務や予見可能性などにもよりますが、民事上の損害賠償責任や刑事責任を問われる場合もあります。そうなれば観光振興どころではありません。

Tour la Nuit

自転車は走行中、風を受ける形になるので体温の上昇が抑えられる面があります。一方で、そのことにより熱中症の症状に気づきにくくなるので危険でもあります。実際に自転車に乗っていて熱中症になる人は、毎年一定程度出ます。自損事故で死亡し、その原因が熱中症と疑われるケースもあると言います。

それを防ぐため、救護所を設置したり、パトロール隊を組織したり、飲水を呼び掛けたり、給水ポイントを設けたり、休憩場所やミストでクーリングゾーンを配置したりなど、いろいろな対策が求められます。それらを行っても万全とは言えないため、夏季のライドイベント開催に及び腰になっても不思議ではありません。

Tour la NuitTour la Nuit

Tour la NuitTour la Nuit

冬季では寒くて人が集まりませんし、最近は学校の運動会もそうですが、真夏を避けて春や秋に開催をずらしても真夏日になったりしますので安心は出来ません。炎天下で行われるロードレースやライドイベントなんて、もっての外と考える自治体は多いかも知れません。

そんな自転車イベントですが、ヒントとなる事例があります。カナダはケベック州、モントリオールで毎年5月に行われる、“Tour la Nuit”です。その名の通り夜に行われるツアー、ライドイベントです。大規模なサイクリングフェスティバル、“Go Velo Montreal Festival”の一部でもあります。( ↓ 動画参照)


金曜日の夕方に集まった数千人規模の参加者が、市内のクルマを通行止めにした街路を走ります。北米には自転車のライドイベントが数多くありますが、その中でも指折りの特色あるイベントと言えるでしょう。夕方から夜にかけて行われるのが最大の特徴です。

一般的にライドイベントは昼間に行われますが、あえての夜間開催です。参加者はそれぞれLEDライトを使って着飾ったり、自転車を装飾したり、音楽を流したり、仮装したり、思い思いに楽しみます。参加者が主役となるライブエンターテイメントでもあります。レースではないので家族連れなど誰でも参加できます。

Tour la NuitTour la Nuit

Tour la NuitTour la Nuit

北米各地から多くのサイクリストが集まります。モントリオールは自転車にフレンドリーな街として知られており、この“Tour la Nuit”の参加に加えて、何泊かして、この街や近郊のサイクリングを楽しむ人もたくさんいます。東海岸の大都市からは近いので、週末のサイクリングにも最適なのです。

同じライドイベントでも、夜間開催だからこそのライトや色鮮やかな光で彩られる特徴的なライドになります。いわゆる「映え」ますし、楽しさも増します。熱中症を避けるために夜間にしたわけではありませんが、結果として熱中症になる心配は限りなく低いでしょう。



Tour la NuitTour la Nuit

ちなみに今年は先週末でしたが、あいにくの悪天候のため直前で中止されました。主催する“Velo Quebec”やモントリオール市、モントリオール警察などが直前まで開催を目指しましたが、参加者の安全を優先して涙を飲みました。ただ、参加予定者はそのまま日曜日に行われた“Tour de l’Ile”に参加できました。

野外イベントですから天候に左右されるのは仕方ありません。残念ながら今年の“Tour la Nuit”は中止になりましたが、モントリオール市内や近郊のサイクリングを楽しんだ人は多かったようです。イベントだけでなく、モントリオールがサイクリングにフレンドリーな街だからこそ、楽しみ方はいろいろあるわけです。

Tour la NuitTour la Nuit

夜の自転車ライドイベント、なかなか面白そうです。私は日本で同様のイベントは寡聞にして知りません。当然ながら、すぐに知名度や人気を得られるものではありませんが、他と差別化するには面白い選択肢ではないでしょうか。今のところ。早い者勝ちです。

ただ、イベントだけ打てばいいというものではないのも事実です。自転車のまちと標榜しながら、自転車インフラの整備が全く行き届いていないところもあります。まず自転車を打ち出すなら、環境整備から取り組む必要があります。それでなければ、モントリオールのようには支持されないでしょう。

Tour la NuitTour la Nuit

自転車で観光振興しようと考える自治体は増えていますが、人気となる事例が多いとは言えません。このブログでも海外の例をいろいろ取り上げていますが、まだまだ差別化できるアイディアはたくさんあります。リスクを低減する方法もあります。ぜひ他とは違うイベントを立ち上げていただきたいものです。







◇ 日々の雑感 ◇

アメリカがキューバ大統領らに制裁、ウクライナもイランもそのままにキューバにも戦乱を広げるつもりでしょうか。

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この記事へのコメント
cycleroadさん,こんばんは.

地域の振興に自転車を活用しようというなら,国内の他地域や海外からのサイクリスト(主にスポーツ系の自転車愛好者)を誘致するより,先ず地元住民がより安全,快適かつ迅速,機能的に自転車を使える基礎的な環境の整備を行い,自転車の交通ルールの正常化を推進するのが筋です.

少なくとも現状「自転車通行可(歩行者優先)」とされている,無駄に広過ぎる歩道では応急的には車道側へ歩行者と自転車が交錯しないような物理的な処置をして,大量の自転車をスピードアップして円滑に流し,駐輪も体裁よく吸収する施策が望まれます.

地元の住民,特に若い世代が自信と誇りを持ってスポーツ自転車に取り組めるなら,サイクリストに対する意識も好ましい方向に向かうでしょう.周囲との人間関係を損ねないように堂々と「(スポーツ)自転車が好き」と公言できないようではうまくゆく筈がありません.
Posted by マイロネフ at June 07, 2026 21:29
マイロネフさん、こんにちは。コメントありがとうございます。

そうですね、自転車のまちを堂々と掲げながら、自転車インフラの整備という面については全くと言っていいほど無頓着な自治体も少なくないと思います。
横並び意識で自分のところも観光振興したいという意識はあっても、インフラ面で日本の平均的な状態で劣っているとは思わないのでしょう。

もちろん、住民の感じ方も海外とは違うと思いますが、実際に自転車で走りやすい、安全で安心して走れるまちでなければ、自転車のまちは、まったくの独りよがりで、観光振興にもつながらない、実際につながっていないのは否めないでしょうね。
Posted by cycleroad at June 08, 2026 10:58
 
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