September 18, 2026

少しずつでも増やすしかない

距離が450kmに達しました。


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イギリスの首都ロンドンの自転車道ネットワークの総延長です。450が大きい数字なのか、あるいは他の都市と比べるのは都市の人口や面積、交通環境などさまざまな点が違うので、あまり意味はないでしょう。でも10年前の5倍の長さになったという事実は、急速に整備が進んだことを示しています。

もちろん長さだけで判断されるわけではなく、高く評価される一方で、依然としてさまざまな問題も指摘されており、意見が分かれる部分もあります。ただ、ロンドン市長の、Sadiq Khan 氏は自転車レーンの劇的拡大を指揮して、ロンドンをサイクリングの代名詞にするという約束を果たしたと述べています。

Cycleways LondonCycleways London

ロンドンの自転車道ネットワークは、既に首都の地下鉄網全体の長さを上回っており、ロンドン・パリ間の距離より長くなりました。ロンドン交通局が、2030年までにロンドン市民の4割がネットワークから400メートル以内に居住する状態にするとの目標に沿って整備してきたものです。

実際に昨年発表されたデータによれば、このネットワークの拡大によって自転車利用人口は急増しています。一日に150万件の自転車移動がされており、これは2019年と比べて43%も増加しました。一方で自転車事故による死亡者数は減少しています。

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ロンドン交通局の目標は自転車道ネットワークに400メートル以内にアクセスできる住民の数であり、単純な総距離でないところがポイントです。ただ整備しやすいというだけで、どこにも接続していないような自転車レーンを設置しても意味がない、距離を単に延ばすのは間違った目標だと考えているのです。

本当に必要なのは住民が便利に移動できる、自転車道のネットワークです。有機的につながり、目的地まで利用できなくては有用性は高くありません。そして、自転車専用レーンとして市民が安全に走行できるようにする必要があると考えています。それでなければ利用者はこれほど増えないでしょう。

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最寄りの自転車道ネットワークまでは、住宅街の生活道路などを通ることになります。相対的に交通量も少ないでしょうし、そこにレーンが無くてもかまわないでしょう。それよりアクセスした自転車道ネットワークが、各方向に伸びていて、市内各所に便利に移動できることが重要です。

仮に幹線でない生活道路のような部分にまでレーンを設置するとロンドン全体で1万4千キロも整備する必要があり、現実的とは言えません。ネットワークの道路を通れば、必ずしも最短距離にはなりませんが、安全で走りやすければ、多くの人が使うでしょう。ですから放射状の道路だけでなく環状道路などつなぐ道路も重要です。

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クルマの交通量が多い道路には、安全のために車線がセパレートされて保護されたレーンが必要です。もちろん、現状で必要な全てのレーンがそうなっているわけではなく、実現が難しい場所もありますが、安全なことが重要だと当局は理解しており、それを満たすべく努力しています。

市長や当局がこのように考えて整備を進めるのは、何より市民に自転車に乗ってもらうためです。実は、自転車に乗る人が大きく増えた結果、クルマの交通量が減り、二酸化炭素排出量が減り、大気汚染が減っているのです。これらの数値もこの10年間で大幅に改善しました。

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このブログでは何度も取り上げていますが、ヨーロッパではディーゼル車などによる窒素酸化物や粒子状物質による大気汚染で、深刻な健康被害が出ています。この状況を改善するのは喫緊の課題であり、またクルマの利用を減らして温暖化ガスを減らすのはヨーロッパ諸国共通の懸案であり公約でもあります。

渋滞対策は市民の利便性向上の点でも重要ですし、もちろん交通安全も大切です。ロンドンでは2030年までに実質的なゼロカーボンの達成を公約にしていますが、このような社会問題も含めて、自転車利用の拡大に真剣に取り組んでいます。その方策の柱の一つが自転車道ネットワークの整備なのです。

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自転車道をネットワークとして整備し10年間で5倍とは羨ましい限りです。日本でも自転車レーンの整備の必要性が叫ばれていますが、遅々として進んでいません。整備されても矢羽根表示をペイントするだけだったり、有機的に接続してネットワークにするなどの考えも、あまり見られません。なぜこれほど違うのでしょうか。

まず、政策としてのプライオリティが低く、政治家や当局に自転車政策推進のインセンティブが乏しいことが挙げられるでしょう。日本でも温暖化対策が考えられていないわけではありませんが、多くは水素燃料とか原発再稼働とかエネルギー関連が主で、クルマを減らすという方向には向いていません。EVシフトも進んでいません。

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物価高対策としてガソリン価格が上がらないよう補助金が投入されています。市民生活や産業支援の意図はわかりますが、ガソリン価格を下げてその消費を推奨する形です。このやり方は化石燃料の消費を増やすことになります。少なくともクルマの利用を減らし、自転車での移動を増やそうというものではありません。

ヨーロッパで以前は化石燃料車を廃止しEVにする目標が掲げられていましたが、諸般の事情で最近は方向転換しています。充電インフラの不足等もありますし、ガソリン車を置き換えても渋滞は減りません。そんな中でヨーロッパ各国が自転車の利用推進を進めていますが、日本ではそうした方向にはなりません。

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日本は台数だけなら有数の自転車大国であり、すでに多くの人が自転車を使っていることもあるでしょう。自転車利用者を増やそうとはなりません。日本で自転車は最寄り駅までのアシであり、職場まで自転車通勤する人は全体からすれば僅かです。都市の移動手段としての自転車需要も相対的に小さいわけです。

日本では自転車を歩道走行させてきたため、タイヤが太く足つき性はいいがスピードは出ず、それなりの距離を乗るのに向いていない日本独特のママチャリが自転車の標準になってしまいました。これでは自転車のポテンシャルは発揮できず、ママチャリは直接職場まで自転車通勤するのには向かないでしょう。

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東京などでは地下鉄や鉄道網が発達しており、通勤手段のメインです。クルマをやめて自転車にするより、電車にするでしょう。最寄り駅や近所のスーパーに行くくらいしか自転車は利用されません。自転車を都市での主要な移動手段として活用するという方向になりません。このような背景も自転車政策が推進されない要因でしょう。

半世紀にわたって歩道走行だった日本ですが、国土交通省や警察庁は平成23年(2011年)、自転車を車道走行に戻すという方針の大転換を行いました。その後もなかなか歩道走行は改善されず、歩行者との事故も増え、人々は歩行者感覚で自転車に乗るため、混沌とした自転車通行のカオスは解消されませんでした。

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そこで今年になって自転車に青キップが導入され、車道走行する人が増えました。すると、一部の場所での車道走行の危険さ、自転車走行空間の乏しさが痛感され、一般の人から、まず自転車レーンを整備しろという声が上がるようになってきました。これは一つの変化と言えるでしょう。

つまり、長い時間がかかっていますが、ようやく日本でも自転車走行空間を整備すべしという方向になりつつあります。温暖化対策やガソリン価格の高騰から自転車での移動を拡大しようということにはなりませんが、少しずつ日本でも自転車レーンの整備が進む可能性は出てきました。

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日本の場合は、交通安全のために自転車レーンを、ということが中心になるでしょう。ロンドンのようにはいかないまでも、まず少しずつでもレーンを増やしていくしかありません。彼我の差は大きいですが、この機に自転車走行空間の整備を求めていきたいものです。





◇ 日々の雑感 ◇

EUなどでは子供のSNS利用を制限する方向に進んでます。意見は分かれるでしょうが日本も制限すべきでは。

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この記事へのコメント
cycleroadさん,おはようございます.

以前にも1回申したかと思いますが,日本で自転車専用レーンが思わしく進まないのは年間降水量の多い気候風土の影響も否定はできないと思います.

残念なことにロンドンと我が日本の主要都市の年間気温と降水量の比較データが無いので何とももどかしいのですが,彼の国は西岸海洋性気候で日本のような長雨も,気象災害も少ないのではないかと考えられます.

今回の秋の大型連休も台風の影響は避けられない見込みになっていますが,休日の度ごとに悪天候では特にスポーツ自転車に乗る気も失せるというものでしょう.
Posted by マイロネフ at September 19, 2026 07:18
マイロネフさん、こんにちは。コメントありがとうございます。

たしかに日本が高温多湿なのは間違いないと思いますが、それでもこれだけ自転車に乗る人が多いわけで、気候風土とは関係なく自転車インフラの整備は求められるでしょう。

北欧などでは降雪量が多くても年間を通して自転車に乗る人の多い都市もあります。大雨はなくても、渇水や熱波、竜巻や森林火災などいろいろな災害はあるでしょう。

降水量が多いため、自転車に乗る人が少ないというならわかりますが、そうでないわけで、気候のせいには出来ないと思います。
Posted by cycleroad at September 21, 2026 11:15
 
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